最高の晩餐
なつかしい町を散策して夕方宿に戻ってくると、なつかしいお爺ちゃんが僕を待っていてくれた。僕のことをその大きな身体で抱きしめる。彼は当時、食事のできるところを探し歩いていた僕を家に招いて夕飯をご馳走してくれたのだ。出会いの挨拶をするなり、「ついてこい、行くぞ」と僕を車に乗せる。運転してくれているのは彼の友人だろうか。言葉も通じないし正直訳がわからないのだが、安心はできるので身を委ねるしかないのである。 車は街を離れ、町が広がる山の反対側の山の麓に向かう。どうやらそこにおすすめのカフェがあるらしく、そこに行こうと言っているようだ。お爺ちゃんふたりが「おすすめのカフェがある」だなんてファンキーである。夕暮れの下、珈琲を飲みながら会話に花を咲かせたら、さらに山奥にあるお友達のレストランに連れて行ってくれるという。 ↑ナイスガイなふたり その店のそばには、独伊侵略の際に散った兵士たちの慰霊碑があり、沈む夕日を浴びている。お爺さんのお友達のセノフォン氏は、アルバニアではちょっとした有名な作曲家らしく、こう言うのだ。「この風景を眺めて風の音を聞きながら俺は曲を作るんだ」。風がいっそう強く吹く。山と慰霊碑を赤く染めるその風景を、僕はきっと忘れることはできないだろう。 ↑たたずむ慰霊碑 ↑赤く染まる山 アルバニアの地方料理の数々、そして「ラキ」と呼ばれる超強力な蒸留酒を三人でぐいぐいストレートで飲んでいく。しかしこの御仁方、酒が異常に強い。すっかり酔ってしまった僕は、帰りも気持ちよく車に揺られながら宿へと帰ったのである。アルバニアの空の下、風を受けながらの再会の乾杯はかけがえのない味となった。ファレミンデーリ、ありがとう、だ。 日本の友人23日 酒も特に残らずいい天気だ。山から昇る朝日が眩しい。朝飯を食べて散歩でもしようと外に出ると、お爺ちゃんがすでに家の前に待ち構えていた。当時と同じように彼の家に招いてくれる。おばあちゃんのかわいらしい笑顔も着てるパジャマも当時のままである。少しすると「ついてこい」と昨日と同じ手振り、サングラスをかけて少しダンディにおしゃれをしたお爺ちゃん。でも特にこれといった何の用事もなく、彼の散歩に付いていかされているだけだ。途中、何度も彼の友達に会い、そのたびに井戸端会議が始まったり、お茶しだしたり、チェスをしだしたり。基本的に放っておかれるのに誰かに会うたびに、「日本の友達、Yukiだ」と言ってニヤリと笑うのがとても心地よい。この気張らない感じがとても嬉しいのだ。 その後、お爺ちゃんと別れ、久しぶりのギロカステル城に行ったり土産を買ったり、夕飯は少し豪華に、ビール飲みながらポークステーキのコースを……これでも500円以下は安すぎだろう。 ↑高台の上にある戦争博物館 ↑これは2人前ではなく1人分である |