ウユニフライト13日

さて、この日が来た。俺が学生の頃から、いやいやむしろ物心ついたときから、いやいやむしろ生まれる前から憧れていたウユニ塩湖についに行く。まだ朝も暗いうちから準備をしてドミを出る。このあとヨーロッパに向かうという世界一周中の女の子が、「南米死ぬほど楽しかった!ウユニは最高なんてものじゃなかった!」と言って宿を出ていった。南米は旅人を虜にするという。

ウユニに行くに際して、バスの予約は現地でないと取れなかったため、俺は念を入れて飛行機を日本から予約しておいた。これはまっこと正解で、A君の乗った夜行バスは、昨日到着の時点で予約でいっぱいだった。また、おとといのバスは豪雨でキャンセルになったそうで、ウユニへのハードルの高さを感じるね。今日もラパスは大雨。ちゃんとウユニ行き小型機は飛ぶんかいな。ドキドキ。

時間は押したものの、20人乗りくらいの小型プロペラ機でいざウユニへ。約1時間のグラッグラに揺れるフライト、ウユニ周辺は太陽がギラッギラだ。職員がひとりしかいないガラッガラの空港に、ポツンと一台だけ止まっていたバスに乗り、ウユニの中心地へ。

↑ポツーン



ウユニの町

ウユニの町の中心地には安宿やウユニ塩湖行きツアーを手配している現地旅行会社が立ち並んでいて、日本人バックパッカーの姿も多い。雨季ウユニに魅力を感じるのは世界中で日本人くらいなもの、とのことだが果たして本当なのだろうか。信じがたい。欧米では、わざわざコンディションの悪いこの時期に、旅行のしにくいウユニに行くなんて……みたいな感じらしい。だとすれば本当に民族間の感覚の差には驚くばかりだが、実際欧米人の姿は少ないんだよな。

安宿アヴェニーダに荷物を預け、旅行社の前で他のパッカーと話していると、大幅に遅れてA君が到着。あと、旧日本軍の兵士がそばにいるなと思ったら、同じバスに乗っていたという旧日本軍兵士みたいな格好をしている大学生だった。あと少しで「もう終戦しましたよ」と声をかけるところだった。

↑ウユニは快晴!


今日のウユニツアーはもう大体出てしまっていて今日は特にすることがなかったが、皆で飯食いながら、G君やMちゃんといった、ElSolarioで一緒だった旅行者たちと今から半日ツアー行きませんかー!となる。というわけで急遽ランクルをチャーターし、ウユニ塩湖へ!ついにこの瞬間が来たんだぜ。

↑みんなで行きますか!



ウユニ塩湖とは?

さて、ここでウユニ塩湖の説明をしておきたい。ボリビア西方、標高3700mにある塩の大地がそれである。大陸の隆起により閉じ込められた海水が長い年月を経て干上がった面積12000平方kmの超広大な塩の塊であり、見渡す限り広がる真っ白な大地は、まるで新雪の雪原を彷彿とさせる。そして1〜3月の雨季の時期限定、ほどよく雨が降りその白い大地に雨水が薄く溜まり、翌日さらに晴天に恵まれたコンディション下で、空を鏡写しにしたかのような奇跡の風景が広がるのだ。

また、その大地の下には世界の半分にあたるリチウムが埋蔵されているとも言われており、将来的な発掘を見越して政府が世界遺産に登録"しない"ことから知る人ぞ知る存在になっているところも、その神秘性に拍車をかけている。

と、お勉強はここまでにして、とにかくその絶景が早く見たい!早く見せろ!ということで車内はTRFでテンションMAX!これだけ晴れてればすごい鏡面が見れるんじゃねーか!? 町からさらに1時間! 湖が近づいてきて! ランクルの荷台にみんなで乗って……

↑どーーーん

↑どどーーーん

↑どどどーーーん



奇跡の絶景

こんな風景があるんだな。ちくしょう、自然ってのは本当に凄いぜ。目の前に鏡面世界が広がったときの衝撃ときたら、言葉では言い表せないものがある。ただただ視界に飛び込んでくるその風景に、みんな笑ってる。みんな鳥肌立てながら笑ってるのがわかる。俺だって例外じゃない。みんな「すげー」しか言えていない。これはみんなの語彙数が貧弱なのではなくて、あまりにも想像を超えた風景を前に、言葉が意味を為していないのだ。写真でさえ凄まじいのに、見渡す限りに広がるこの世界観はあまりにも圧倒的だ。

風景をさんざん堪能したあとは、とりあえずA君と全裸になってみたり、とりあえず買った変な衣装着てみたり、ウユニ定番のトリック写真に挑戦してみたり……。何時間経っても飽きないのが、何よりもドライバーに申し訳ない。「そろそろ帰ろうよー」と言うドライバーに、「もうちょっとだけ!」が何回続いたことか。

↑何をしても絵になる。

↑人形と一緒に一枚。

↑俺は感無量だよ……。


暗くなって町へ戻る。町が暗すぎると思ったら、当然のように街中が停電していた。ちょ、腹減りまくってるのにメシ屋全然あいてねえ。探して、唯一開いていた店でボリメシを食って、部屋に戻ったら爆睡。

と思いきや、俺、なんか身体中が変な刺激に襲われ眠れないという意味のわからない呪いにかかる。説明しにくいんだが、とにかく着ている服や肌に触れているもの全てに気持ち悪い不快感さが伴って叫びだしそうになるという精神病患者のような状態に。断言できる、あの部屋絶対に何かいた。

↑幽霊屋敷アヴェニーダ