予想外温泉街

列車を降りると宿の客引きがわっさわっさやってくる。予算相応っぽい宿に目星をつけて、列車で向かいの席にいたドイツ人のオッサンと共に宿の価格交渉をする。オッサンは一泊の予算をかなり低めに取っているらしく、ある程度の額で合意した俺の横でさらにしぶとく交渉を続けていた。「もう少し安くならないか。ダメだ、高すぎる。じゃあこれならどうだ。よし、それでOKだ。おい日本人!ダブルルームでいくらになったぞ!」

ちょ、お前と一緒かーい!!

なぜか部屋をシェアする流れに。そしてこいつは猛者の匂いがする。なにせ世界のマチュピチュまで来ておいて、カメラ持ってない。旅行にカメラ持ってこないとか、ちょっと俺とは立ってるステージが違う。しかも背負ってるリュック、上着一着入るか入らないかくらいのちっさいナップザックだし。凄い寡黙なのに、宿の前の川が増水してるの見て一人でめっちゃテンション上がってるし。よくわからん人だけど、まぁこういうのもまた面白い展開だわね。

↑宿にはかわいい熊ちゃんが。


マチュピチュ村にはもともと「アグアスカリエンテス」という村名称があって、それは「温泉」という意味なんだとか。ここは温泉街なのだね。山の傾斜に沿ってこじんまりと宿や土産屋が立ち並んでいる様や、村の高いところに公共の温泉があるところなどは、さながら日本の田舎の温泉街のようで、地球の反対にあるとは思えない不思議な親近感が確かにここにはある。雨季でなんとなく靄掛かっていることもあり、温泉饅頭でも売っていそうな雰囲気だ。

↑雨が似合うなんて日本のようだ。



ぬるぬるタイム

と、いうわけでここはやはり日本の心、アグアスカリエンテスに入らなければなるまい。ちゃっかりレンタル業務も兼ねている土産屋で水着を借りて、男女混浴の浴場に向かっていざ入浴……ちょ、ぬるーっ!この寒空の下、このぬるさはきつい! ペルー自体は夏の時期なんだけど、なにせ2500m級のエリアなので、案外寒いんだよね。日本の温泉文化を期待して入ると裏切られるよ。外気が寒くて上がれないんだもん。しかも全く掃除してないようで、壁とか床とかめっちゃぬるっとしてる。おい!どんだけ「ぬる」なんだよ、と。

でもうだうだ上がれないでいたがために、後から入ってきてやっぱり「ぬるーっ!」てなってた同世代の日本人パッカーたちと仲良くなって、そのあとビール片手に散策しつつ御機嫌でメシ食いに行けたからまぁいいか。ビール片手に散策が似合うのもまた温泉街っぽいけどね。

↑大衆浴場、というかもはやただの温水プール。


しかしペルーの料理は本当にイケてるな。日系人が多いからか、しょうゆベースの料理なんかもあるし、肉と芋と米という馴染みのある食卓になるから、日本人ウケがすこぶるいいだろう。魚介のカルパッチョ「セビッチェ」は女子人気抜群と思われ。牛肉と玉葱のしょうゆ炒め「ロモ・サルタード」なんて和の心を感じる。そしてこの料理はぬるくなくてよかった。ピスコサワー沢山飲んで、アイヤ、うまし!

↑奥がロモ・サルタード、セビッチェ。