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信じるか疑うか
ホテルはけっこういいホテルに泊まることにする。テラスからギロカステルの街全体と向こうの山を見渡すことができ、部屋も広くて豪華で朝飯もついている。それでも20ユーロ。ギリシャ低ランクの値段出せば、ここではかなり良いホテルに泊まることができる。欧州最貧国アルバニアです。 街景観の興奮が抜けないんだ。日本では決して見ることはできない類のものだな。唯一英語の話すことのできる宿の親父に「上に登ってけばレストランがあるぞ」と言われ、とりあえず上に向かってゆく。途中、ここに暮らす人たちと何度も絡むが、まーったく何言ってんのかわからない。この国で話されているのはアルバニア語、しかも事前準備すらしてないため、こんにちは、ありがとう、すらわからないや。でもこの国の人たちは本当に人懐っこい。 のそのそと一人のおっちゃんが現れた。身振り手振りで、上のレストランに行くんだ、というようなことを伝えると彼は、オレについてこい、というようなことを示す。なんだろう?ゆっくりと歩く彼の後ろをついて歩く。行き先が上に向かってるってことは、そのレストランにでも案内してくれるのかな・・・。するとレストランと思しき店を通り過ぎてしまった。人の気配がどんどん無くなって行き、日も暮れだしている。ついていって・・いいのか?アルバニアの治安は悪いんだろ? しかしこのおっちゃんからは悪いオーラは感じられない、と自分を信じることにした。おっちゃんの話しかけてくる言葉は全くわからないけど、なんとなく言おうとしていることはわかる。あの山の向こうには何があって、とか旧ユーゴが分裂して、とか。 どうやらおっちゃんは、斜面の一番見晴らしの良いポイントにオレを連れて行きたかったみたいだ。山が夕焼けで真っ赤に染まっている。ギロカステル城すらも上から見下ろしながらおっちゃんと二人、灯りのともり始めた街を眺める。周囲には羊の群れ。あー、なんなんだろ。オレ今全然自分の世界観とは違う場所にいるわ。 ![]() ↑ボーッとできる幸せっていうかね。 ありえんの?こんな親切 下り、またレストランを通り過ぎる。正直腹減ったなぁ・・・。おっちゃんは、「ついてこい」と言う。しかしこのおっちゃんは本当に優しい人だ。口癖のようにオレの名を呼ぶ。「これは〜だ」「車だ避けろ」「OKか?」。心温まるおっちゃんだ。 夜の闇に包まれたギロカステル城を眺めていると今にも魔女狩りでも行われそうな雰囲気だ。幻想的なその風景に身を委ねている自分を、不思議な感覚で見つめているもう一人の自分がいる。 ![]() ↑時計台が見えるかい 「そろそろ戻ろう」 え?どこへ?おっちゃんについていくと、彼は自宅の前で立ち止まり、オレのためにドアを開けてくれる。 「レストランで食べる位ならウチで食べていきな」 えぇぇ おっちゃんとおばちゃんと食卓を囲む。うーん、貴重な経験しとるわー。 その後、首都ティラナにいる娘のスコティーさんと電話したり、おっちゃんの写真を見せてもらったりしているといつのまにか夜の12時近くになっていた。楽しいけど、そろそろおいとましようかな。 二人とも始終ニコニコと、今日会ったばかりの東洋人の若造にこんなにも良くしてくれて、感謝してもし足りない。本当にありがたい。 「本当にありがとう」 「OKか?」 おっちゃん、最高のOKがここにあるよ。 |