ハイキングだ!24日

 さぁ、今日はメテオラまで行くぞ!早朝のバスを乗り過ごし、タクシーで行くのも癪なので歩いて行くことにする。そんなに遠くないだろ。
 山道を一歩一歩登っていく。ハイキングだな、これは。歩いている奴なんて一人もいない。でも途中、枝分かれした道の急な方を選んで登っていくと、隣村のカストラキを左手に見下ろしながら歩くという状況。あぁ、素敵な風景だなぁ。屋根がピンクに近い橙色で統一されているのがなんとも言えんわ。

↑静かな静かな村でした。



お犬様・・・

 山道を歩き続けていると、一匹のワンちゃんが民家から飛び出してきた。彼はオレに擦り寄ってきては離れてを繰り返して、突然オレを先導して歩き出した。
「僕についてきてワン!メテオラまで連れて行くワン!!」
 オレにはそう言っているように聞こえた。犬の後を歩いていくと、道は険しいものの確かに階段などが現れる。さすがギリシャの犬はよくわかっているな。しかし何百段と登っていくと・・・

 道がありませんねん。行き止まりなのねん。

 をい、お犬様・・・ゼェゼェ言って歩いてきておいて道がないんですけど。お犬様はうれしそうに尻尾を振ってさもここが目的地だと言わんばかりだ。ぅあぁあああぁぁ!!・・・戻ろう。

 カストラキの村を横切り、正規の道に合流。看板にメテオラと書いてあるのでこれは間違いない。さー、歩くぞ。この時点でかなりの体力ロスをしてしまっていたよ、お犬様。



メテオラ

 山道をひたすら歩く。どんどんオレの横を観光バスが通り過ぎていく。「苦労もせずにメテオラ拝もうなんざ調子に乗るねぃ!」と毒づいていたオレだが、たまに通りがかるタクシーを何度止めようと思ったことか。しかし根性!好きな時に好きなパノラマを好きなだけ眺められる点がいいんだ。

 岩山の上に見える・・・あれは、修道院だ。実際に見ても信じられない。あの衝撃が今目の前にある。ついに来れたんだなメテオラに。何十〜何百メートル級の切り立った岩山が並んでいる。そしてその上に修道院が。人の成せる業じゃないな。6つの修道院、そのどれもが世俗や迫害から逃れ、天空に近づこうとしたに違いない。
 メガロ・メテオロン修道院に到着。600m以上の岩山の上にある最大級のメテオラだ。期待を裏切らない、むしろそれ以上の圧倒的威容。ヴァルラーム修道院やカストラキの村、向こうの山々でさえも見下ろす高さ。あー最高だ、浸ってしまうよ。修道院の中も、教会や礼拝堂から食堂、台所まで残っていて趣が深いんですわ。

 ドラゴンクエスト5-天空の花嫁-を思い出してしまうぜ。天空、教会、冒険・・・現実離れしたこの風景にドラクエとの共通項を見出してしまうオレ。天空のベル鳴らしてぇー!ピローンピローン♪って鳴ってマスタードラゴンが飛んでくるかもしれねぇな〜。

↑下から見たヴァルラーム修道院。

↑メガロ・メテオロンの存在感。



道無し体力無し

 気合を総動員して歩く。ルサヌー修道院を眺めつつ、アギア・トリアダ修道院へ向かう。この道も長かったが景色が絶景な上にいくぶんか下り坂なので助かる。アギアトリアダを見据える風景は本当に絶景で、カランバカの街を同時に臨むことができるんです。
 アギア・トリアダからはトレッキングコースで一気にカランバカへ下りれるため安心だ・・・ってかそんなもんないし!!どこにもないし!トレッキングコース。あるのは「カランバカあと10km」という看板だけ。。。顔面蒼白、足はガクガクプルプル。

 看板も前兆も何もないが、一箇所だけ山道につながっていそうな狭い狭い獣道があった。・・・これ?これなのか?自分の勘を信じることにした。この先行き止まりだったら、その時は・・・野宿しよう。



祭!!!

 最短コースでカランバカに戻ることのできたオレは宿に戻るやいなや大爆睡。夜起きてギロピタを食おうと思って外に出る。ギロピタというのは、トルコ発祥のサンドイッチみたいな料理。明治通りとかで車で売ってるのを見たことある人いないか?あぶった肉をナイフで削ぎ落としてそれをナンのようなパンで挟むあれだ。オレはギリシャ旅行中何回もこれを食べていた。すっかり虜だったんだわ。

 ・・なんだ?やけに騒がしいな。中心地まで出て行くと、お、何かサウンドチェックしてる!人めっちゃいる!!なんだこれ!セントラル広場にはステージが設営されており、ギリシャ、キプロス、イタリアの国旗が掛かっている。コンサートなのか、よくわからないがとにかくおもしろい時に泊まったのかもしれないな!

 民族的な歌や踊り、演奏と、いい仕事してますな!ビールが更に旨くなったのは間違いないね!イレギュラーに乾杯だ。大盛況でかなり盛り上がっている。楽しい。

あー・・・ビール飲みすぎた。

↑民族衣装に身をまとった女性達が踊っているところです。



ボーっと過ごす日25日

 次はどこに行こう。朝起きてからずっとそれを考えている。東に進みテッサロニキ周辺の遺跡群を見に行こうか。それともアテネまで戻りオリンピック発祥の地オリンピアの遺跡に行ってみるか。どうしよう。
 遺跡はアテネのアクロポリスに行くし、なによりも建造物を見てもメテオラの衝撃は超えられないだろう。そう思ったオレはまったく違う策を考えた。

 このまま北に上って、国境を越えちまうか。

 北にあるのは欧州最貧国アルバニア。まーったく情報がない。ギリシャに行くことを決めて色々と周辺国のことも調べた際に、「国境線から車でしばらく走ったところにギロカステルという街がある」「治安はかなり悪い」、ということを知っただけ。日本は勿論世界各国にもまだまだ馴染みの薄い国だ。ヨーロッパなのに途上国。何か楽しいことが待っているような気がするよ。行ってみようかな。

 バスターミナルに行ってみると、国境近くの街イオアニナ行きのバスは朝8時の一本のみだった。あー、今日はもう一泊ここでのんびり過ごすか〜。そう決める。

 ポカポカと気持ちいいなぁ。うたた寝して音楽聴いて。散歩して腹が減ったら軽く食って。こういう生活は日本にいると何故かしない。もったいない気がしてしまうからだ。しかし何を以ってしてもったいないのか。そんな生活からの解放こそとても大切なことのひとつなんじゃないか・・・。ギリシャのじいさんたちは昼間っからビール飲みながらタベルナで楽しそうにみんなで語ってるじゃないか。

 難しいな。