バンビエンへ26日

夜中からずっと土砂降りだったため、朝の托鉢はお休み?と思いきや、雨の中でも裸足で托鉢は当然のように行われる。雨の日も風の日も夏も冬も関係ないということか。喜捨をする人々も同様に変わらず並んでいる。いち旅行者の微々たる興味程度では踏み込めないものを垣間見た。

雨が止むのを待ち、僕はバスターミナルへ向かう。ルアンパバンでもう一日使うという案もあるが、バンビエンに行くと昨日決めた。アジアの雨上がりは独特の匂いがする。この熱気が僕は好きでたまらない。

↑バスターミナル。



往復いろは坂

ビエンチャンとルアンパバンを結ぶ幹線道路沿いにバンビエンはあるため、なんてことはない、ただの復路である。往路で通ってきた永遠に続くかと思われるようなラオス版いろは坂をまた延々と繰り返した先にバンビエンはある。そしてこのバスの乗客はついていなかった。このバス、トイレがついているのだが、何かが壊れて漏れ出しているようで異臭がすさまじい。さらに、それに対抗するかのようにありえない匂いの香水を大量に使っている奴が車内のどこかにいるらしく、最悪のフレーバーコラボレーションを醸している。加えて右に左に猛スピードで揺られるアトラクションさながらのバスの運転。休憩の度に欧米人旅行者が道端で横並びに胃の中のものを戻していた光景は悲惨としか言いようがなかった。僕はひたすらタオルで顔を覆い眠ることに徹した。やがて羊が1億匹に達しようかという頃、バスは目的地に着いた。

ここバンビエンは、メコンから枝分かれしたナムソン川のほとりにひっそりと位置した景観の美しい町である。川下りなどのアクティビティも有名で、遊びつくすというよりは、酒でも飲み紫煙をくゆらせつつのんびりと過ごす町、首都ビエンチャンから比較的近く幹線道を進めば着けるアクセスの良さも手伝って、規模の割には観光者に人気のある町である。

↑暗くなりかける頃到着。



ハッピータウン

そしてこの町には実はもうひとつの顔がある。それは、アジア有数のマリファナタウンとして名を馳せているということだ。町中のレストランには、「大麻あります」「ガンジャ・ピザおいしい」「マジックマッシュルームジュース」などと、堂々と大麻メニューが店の看板に書かれているくらい大麻売買が横行しているため、欧米人ジャンキーはじめ堕落者たちの楽園となっている……のは2,3年前までのこと。数年前ついに地元警察の大摘発が入り大多数の逮捕者を出したため、今は求めれば無論手に入るし街は懐かしいハッパの匂いで満ちているものの、店頭の見えるところからは姿を消し、かつてほど堂々とした状況ではないようである。

↑キまっている旅行者の姿もあちらこちらに。


そういった意味では夜の治安はあまりよくない。騒ぎ奇声を発している奴もけっこういる。川の対岸は夜になるとパーティー状態となり、昼の穏やかさが嘘のようである。まあこれはこれで楽しいし、その喧騒に委ねたいものである。