ラオス北部へ24日

朝8時、T2バスターミナル。これより10時間以上かけて陸路での山越えをする。短い日程の中でいかに効率良く行きたいところに行くか、学生時代と比べて時間と金のバランスが逆転する社会人の旅では基本である。もちろん僕もそれなりの距離を移動する際は、最近は飛行機を利用するようにしていた。だが今回は敢えて時間を犠牲にしてでもゆっくりとした移動を選んだ。ラオスは山の景色が素晴らしいと聞いていたからだ。

なんだかんだ日本人であることを強く実感するのは、山の景色に落ち着きを覚える時である。僕は神奈川県南にある海の街を故郷に持つ人間なので、一番好きな自然はと言われればやはり海なのだが、日本人としてのアイデンティティを感じるのはやは緑に彩られたり山だ。いまだ手つかずの自然がそのまま残るラオスの山間部は、延々と続くいろは坂のような折り返しの悪路をすさまじいスピードのバスが駆け抜けることで知られる。ビエンチャンと北部をつなぐ幹線道は、バス酔いで有名な旅路でもあるのだ。

↑だが景色は美しい。


村とも呼べない集落もちらほらと見える。お世辞にも生活水準が高いとは言えない。藁葺き屋根に高床式の家屋、朽ちた木壁に着古した人々の服装。幹線沿いにあるため恐らく電気は通っていそうだが……。この水準でもまだ高い方なのかもしれない。恐らく地方山間部にはさらに低水準な暮らしがあることだろう。それでもそんな集落に共通している風景は、外で楽しそうに子供たちが駆け回っている姿だ。



魚とフォー

ところどころでバスは休憩をとる。第一の休憩ポイントはなんてことない小さな町なのだが、メコンの魚が特産品なのか、こぞって乗客たちが生臭い魚の干物や小魚の山を買っていた。当然僕はとても買う気になれなかったのは言うまでもない。

↑これはメコンの魚市。


第二の休憩ポイントでは遅めの昼食をとった。簡素な食堂で僕が選んだのは、「フー」。ベトナムでいう「フォー」と同じ料理だ。衛生状態だって最悪だし、適当に料理しているようにしか見えないのだが、たっぷりとる肉のダシが効いていて素材の味が抜群なのだろう、実に美味い。つけあわせに盛られる野菜類との相性も完璧だ。

↑シンプルながら深みのある味のフー。


そこからさらに6時間。幾度も山を昇りそして下り、日もとうに沈み、あまりの長さにさすがに飽きてきたころ、バスは北部ルアンパバンに到着した。