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ARCTIC MONKEYS「Whatever People Say I Am , That's What I'm Not」
声良し曲良し演奏良しの三拍子そろったバンド。デビュー前は、作品をほとんどリリースしていないにも関わらず、UKで行われるライヴは発売と同時に即完売、ライブは恒に大合唱。その背景にあるのはインターネットを利用した楽曲の無料配信。口コミで広がりリリースと共にドカン!新世代広告型のバンドだ。オアシス以来の新人なんて凄まじいキャッチフレーズと共にその人気もすでに英国のみならずここ日本でも爆発的なものになりつつある。ボーカルの切迫したように歌う様とそれを支えるしっかりとしたリズム隊、ギターのリフのセンスも申し分ない。ニヒリズムとロマンチシズムが同居し、それでいて時には激情を掻き立てるようなメロディ、これは誰しもが持っていた十代の頃の不器用な感覚に他ならない。オススメ、単純且つ最高なリフで攻めるA「I Bet You Look Good On The Dancefloor 」、E「Still Take You Home 」、跳ねるリズムとボーカルの勢いがあいまったC「Dancing Shoes」、ハイヴスを食い兼ねない疾走感D「You Probably Couldn't See For The Lights But You Were Looking Straight At Me」、静から動への転換、この作品一番の秀逸曲J「When The Sun Goes Down 」、ラストは大合唱であろうK「From The Ritz To The Rubble」。歌詞も単純なものではなく非常にセンス溢れるものなのでしっかり読んでみることをおすすめします。ロックンロールに必要なものを一通り兼ね揃え、出るべくして出てきたバンドだなぁ。


THE BANDITS「And They Walked Away」
ロックの最重要地リヴァプール出身の実力派バンド。そのごった煮サウンドとギター2本+キーボードの6人組、というと同郷のコーラルが想起されるが、まさに似たようなサウンド。しかしコーラルよりもずっとストレートなロックンロールでだいぶ聴き易いと思われる。出てくる時期がコーラルより早ければ、今の評価はもしかしたら逆になっていたかもしれない。コーラルやリバティーンズ、ミュージック、ズートンズにスタンズやはたまたノエルさんすら参加するミラクルイベント"バンドワゴン"の主催者であり、他のバンドとの交友も深そうだ。その独特の、なつかしさや古さを現代風にのそっと甦らせてくる楽曲群は、どれもこれもとっつきにくそうで意外とこれがキャッチーで耳に残る。ライブの要所を締めれそうなグッドナンバーが数多くあり、@「2Step Rock」、A「The Warning」、C「Numbers」、D「Once Upon A Time」、F「Hung Or Hunger」、H「Use Your Voice」等、古めかしいおかしなギターリフにエモーショナルなボーカル、サイケなキーボード・・・個性をむき出しにする曲がずらり。うちの親父すら激はまりしたバンディッツであり、次世代を担う重要バンドのひとつとなりえたバンドであるが、残念ながらこの前解散しちゃいました。最初にして最後となってしまったフルアルバムだが、是非聞いてもらいたい一枚である。


BECK「Mellow Gold」
94年、NIRVANAからの呪縛を解き放ったのは少年のようなあどけなさを持ったりんごほっぺの一人の青年。ブルースとヒップホップを内包し、強烈なスライドギターが耳に残るデビューシングル@「Loser」、オレは負け犬だ殺してくれ、と歌った彼の印象はまたたくまに世界中に広まったのだ。見た目とは裏腹にその声はひたすら渋く、フォーキーで頑固な気質が見え隠れ。@発売当初は、グランジに沸く音楽シーンを一蹴し衝撃を与えたものだが、単なるアイディア一発屋のような見方もあったらしい。しかし間違いなくこの作品でそのような評価を覆したことだろう。遊び心満載のサウンドと、ノリと思いつきの音が所々に散りばめられているが、なんといっても各曲におけるギターやベースのリフという屋台骨がしっかりしているため曲は崩れることなく絶妙なバランス感。突如飛び出す爆裂ギターノイズや効果音がおもしろすぎる。大名曲A「Pay No Mind」やI「Nightmare Happy Girl」のようにじっくり聞かせる曲を書けることがやはり強みだと思う。あくまで彼の母体はフォークなんだということを知らされる。オレとしてはB「Fuck'n With My Head」、D「Soul Suckin Jerk」のようなジャンル不問のベック節が炸裂する曲の方が好きかもしんない。天才と阿呆の紙一重、それを天才領域に倒しこむ数少ない感覚の持ち主だろう。


BELLE & SEBASTIAN「The Boy With The Arab Strap」
地元グラスゴー密接型バンドでメディア露出を避けつつと話題を高め、3枚のシングル後に出したBRIT AWARDの新人賞を獲得したこの作品。日本での評価をぐっとあげたのも多分この作品からでしょう。オレもベルセバはこの作品が一番好きだな。さてベルアンドセバスチャン、最大の魅力は何と言ってもまずその世界観にある。儚げで消えていきそうでありながらしっかりと聴き手に入り込んでくる、その美しい楽曲。一見ラフなように聞こえる演奏も、よくよく聞けばバンド楽器から弦楽器、管楽器まで数多くの楽器が緻密な構成力を持って絡まりあっている。スチュアートやイザベルの声も世界に浸らせる心地よさを持っているが、それでいて歌詞がどことなく残酷的であるところがこのバンドの特徴。バンマスのスチュアート・マードックは、曲中の、ある瞬間の美しさを切り取る能力に非常に長けていて、この作品はそんな世界観を持つベルセバの作品の中でも最高の出来だと思われる。自分の地元の自然の中で、心を空っぽにして聞きたいそんな一枚。スチュアートとイザベルのユニゾンがため息が出るほど美しいA「Sleep The Clock Around」、ストリングスがここまで効果的に働いてる曲にはなかなかお目にかかれないだろう、ドラマティックなG「Dirty Dream Number Two」は何百回聞いても心に染みるよ。間違いなく歴史に残る傑作盤。
BELLE & SEBASTIAN「Fold Your Hands Child , You Walk Like A Peasant」
MUMの姉妹を起用したこのセンス溢れるジャケを見て思わずジャケ買いした!としてもそれはアナタ大正解。一貫した癒しイメージを持つなかれ、これほどまでに音にこだわり様々な楽器を自然に配置したあげく優しい男女ボーカルを使い分けて曲に色を与えるバンドなぞベルセバだけだ。前作に比べて牧歌的な暖かさが増していて聴く者の心をそっと包み込む。そのアコースティックさからは想像もつかない、シニカルで文学的な残酷性を持った歌詞も健在。儚く美しく導入する@「I Fought In A War」の滑り出しが、「戦争で友人を置き去りにしてきた」だとはこれまた。これは全て計算しつくされたうえで構築されているのだろうか?スチュアートよ。前作に負けず劣らずの捨て曲一切ナシの作品。個人的に特に好きなのは、懐かしさを覚えるイントロとイザベルの声が心地良いC「Waiting For The Moon To Rise」、切なさの真骨頂F「The Chalet Lines」、作品中最もポップでスケールの大きいH「Women's Realm」、メロディメイカーぶりを見せつけるJ「There's Too Much Love」。しかし、タイトル「子よ拳を握り締めろ、小作人のように歩いているぞ」、邦題は「私の中の悪魔」。何で?まぁセンスあるからいいけど、ジャケイメージから付けた邦題じゃねぇか?と。美メロの中に酷な歌詞が存在しているように、残酷性は色々なところに潜んでいる、というような意味を言いたいのかな。


BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB「Black Rebel Motorcycle Club」
バンドを評価するにあたって、いろんな要素というものがあると思うが、オレにとってBRMCは「かっこいい」という言葉ひとつで説明がつくバンドだ。とにかくかっこいい。曲がかっこいい、音がかっこいい、ライブがかっこいい、見た目がかっこいい、黒統一がかっこいい、etc。だからオレはBRMCってどんな?って聞かれても、あれこれ説明はしない。ただ一言「とにかくクソかっこいい」と言う。こういうバンドにデビューから立ち会えてることはうれしく思う。ただまぁここでもそれで終わらせちゃうと載せてる意味がないので、多少文章を書いておきます。01年発表のデビュー作、ジザメリ直系の轟音ノイズと浮遊メロディにロックンロール魂を持つ楽曲群。轟音ノイズ使いということで、シューゲイザー系統かと言われれば違う気がする。というのもこのバンドの核はベースにあるように思えるからだ。グングンとうなりをあげてバンドを牽引するロックンロール抜群なベースがこのバンドをロックンロールバンドたらしめている所以である。@「Love Burns」でいきなりこのバンドの魅力が最大限に迫ってくる。サイケな冒頭から、センスあるアコギ、最強のメロディが流れ出す。サビのギターの絡みつき方がかっこよすぎなA「Red Eyes And Tears」、疾走感と交互に歌うボーカルがたまらないB「Whatever Happened To My Rock'N' Roll」。後半に向かうにつれ混沌さは増していき、最後数秒は綺麗なアルペジオで去ってゆくようにフェードアウト。傑作盤です。
BLACK REBEL MOTORCYCLE CLUB「Take Them On , On Your Own」
くー!相変わらずオレの琴線をビンビンに震わせてくれます。構成の仕方や楽曲の作り方等基本的に前作から大きな変化はありません。でも、オレとしては前作があまりにも素晴らしかったので、ここは敢えて急激な変化は欲していなかったんだよね。前作を越えられないとしてももう一枚同じようなことをやってる作品が欲しかった。それが評論家たちの評価を暗に傾けるとしてもね。で、間違いなく前作の方が優秀な作品なんだけど、この二枚があることによりBRMCのライブの勢いに厚みが間違いなく増す。この作品に関するトータル的な評価は前作ほどではないけれども、前作とセットになってる今作、と考えるとこの作品のあり方が全く違ったものになる。レディオヘッドで言う「Kid A」と「Amnesiac」を一緒に聞け、っていうのに近い感覚をオレは感じる。A「Six Barrel Shotgun」やE「We're All In Love」、J「Rise Or Fall」、K「Going Under」のように疾走感とわかりやすさを意識した曲があるためか、どっちかというとこちらの方が入りやすいかもしれないね。しかしこれでもかと歪ませるギターとベースとシニカルなメロディは健在。@「Stop」やC「In Like The Rose」のような曲でこのバンドの凄さが分かる。サイケと轟音サウンドをロックンロールを使ってここまで昇華できるのは彼らしかいないでしょって。


BLOC PARTY「Silent Alarm」
2005年注目筆頭株の三色混合のバンド。別に肌の色が三色だからどうこう、って話ではないが非常にトリッキーでカラフルな楽曲を持つ。ニューウェイヴやダンスミュージックの影響下にはあるものの、同時期にブレイクした他のニューウェイヴ一派のバンドたちとは一線を画しているのは間違いない。ボーカルのケリー・オケレケは黒人なんだが、彼が黒人特有のねばっこさや土臭さをあまり感じさせない、どちらかといえば白人のような声とセンスを持っているのが面白い。さて肝心の楽曲たちであるが、リズム隊を語らずにこのバンドを語ることはできない、それくらいインパクトの強いリズム隊だ。バンドの中で一番目立ってるのがドラムってのがオレ的には熱い。早急に急き込むように叩き込まれるドラムのフィルインの迫力が半端じゃない。しかしかといってドラムのワンマンバンドなどではなく、トリッキーなギターリフと控えめながらも的を得たベースラインと複雑に絡まりあう見事なアレンジ。I「So Here We Are」のようなバラードで意外にメロディアスな一面を見せるのでこの作品の完成度が上がっているのだが、やはりA「Helicopter」やB「Positive Tension」、J「Luno」のような激しい曲が聴いていて楽しい。これで先発シングルの「Little Thoughts」も入っててくれたらな〜。


BLUR「Parklife」
ブリットポップ期を語るうえで間違いなくはずせない一枚。1曲1曲が非常にいい作りをしているうえに、1曲として聞くより作品を通して聴いた方が断然良いという名作。時間ないんだけどとりあえずブリットポップっての聞かせてよ?と言われれば、これとオアシス2ndを聞かせるべき。オレ個人的には骨太いギターロックが大好きなのでオアシスの方が断然好きなんだけど、このブラーのカラフルさの方が好きという人もたくさんいると思います。16曲もあり顔色をコロコロ変えるのに作品としてまとまっている楽曲群と、曲中いたるところに存在するきらめく様な瞬間は拍手ものです。それは勿論デーモン・アルバーンの持つ一貫したポップセンスが成せる業であり、そこにグレアム・コクソンの超個性的なギターが絡むからであります。オレは@「Girls & Boys」、B「End Of Century」、E「Badhead」、K「Clover Over Dover」あたりが好きなんだけど、上に書いたとおり非常にカラフルであるため人により好きな曲は分かれそう。ところでですね、最近はポップというものの質が下がってると思うんです。特に日本。上っ面な表層ポップがのさばってしまっていて核である曲中枢部分に目を向けられないことが多い。ポップというのは音楽性や歴史や色々なものをよく消化したうえで普遍的且つ大衆的、であるべきだと思うのだけど、そういった大切なものが忘れ去られがちだと思います。ブリットポップから10年が経って過去のことと思われてきている今だからこそ、こういう名盤を聴きなおす必要があると思います。


CAESARS「39 Minutes Of Bliss」
スウェーデン、CAESARS PALACE改名後の快作。スウェーデンは粋がいいですな、変に個性的なのが出てくる。今作を語るに欠かせないのがキーボードの絶妙な入り具合でしょ。メンバーにキーボーディストがいないくせに素晴らしい個性を見せ付ける。古き良きチープなガレージ感と切なくもニヒリズム溢れるアレンジセンスを持つバンド。なんだろうなぁ、同じスウェーデンでも、別にメロディセンスがマンドほどあるわけでもなく、楽曲のおもしろみがハイヴスほどあるわけでもない。声が魅力的なわけでもない。楽器の音がいいわけでもうまいわけでもない。でも、凄くいいんだこのバンド、オレ凄く好き。で、考えたんだけど何故にいいかということをさ。それはツボをわかってるという点だと思うね。ここでこういうアレンジしてきたらテンション上がるなぁ、という期待に応えてくれるんだね。悶絶するイントロを持つ@「Sork It Out」だったり、イントロと同じアレンジをサビに持ってくるA「(I'm Gonna) Kick You Out」だったり、ホントに絶妙なところで楽器がブレイクしてくれるC「Jerk It Out」だったり、頭打ちスネアに完璧なタイミングで入るギターリフのE「Only You」だったり、プライマルとオアシスを足して割ったようなバラードI「Fun And Games」だったり。今後バンドとしての壮大感が増していけば凄い人気バンドに化けるかもしんないね。


THE CHARLATANS「The Charlatans UK」
作品タイトルに自らのバンド名をあしらってきた渾身の4th。ストーンローゼズのパクリだなんだと言われていたそれまでを一蹴するかのごとき鳥肌モノの傑作。これと次作「Tellin' Stories」がホント大好き。この頃のティム・バージェスの低音のノリ具合は本当に素晴らしく、この作品からはもう偽イアン・ブラウンなんて言わせねぇ。バンドアンサンブルに視点を向けてみてもグルーヴ感バッチリ、加えて一番楽曲のレベルが高かったこの時期ですからね、悪いわけがないんだわ。各楽曲本当に良く練られていて、曲においても作品全体においても構成力は素晴らしい。スネアのぬける音や弦楽器の音作りもぬかりなし。そして濃密で堂々たるアレンジ。ブリットポップ期のバンドには珍しい、このバンド特有の武器であるキーボード奏者がメンバーにいるという点であるが、このキーボーディストが前面に出つつも曲を潰さない素晴らしい仕事振りを見せる。この後に不慮の事故死を遂げてしまうのだが、本当に惜しい逸材を亡くしてしまったものです。おすすめとなると、うーん、敢えて言うならA「Feeling Holy」、B「Just Lookin'」があって、他が並んでる感じ、かなぁ。オレはね。この作品と次作はシャーラタンズの真骨頂、UKギターロックファンなら確実に必聴盤。
THE CHARLATANS「Tellin' Stories」
泣く子も黙るシャーラタンズ5th。大傑作。ロブ・コリンズという非常に才能溢れるキーボーディストの死という逆境を乗り越え発表した作品は皮肉なことにシャーラタンズの中で1,2を争う作品となってしまいました。前作以上にティム・バージェスの声の魅力が増しており、圧倒的に力強い存在感を誇る低音の響き具合は最高。それに加えバンドアンサンブルが並みではない。そして次から次へと名曲が立ち並ぶ様にはおもわず平伏してしまう。ここへきてシャーラタンズはイギリスにおいて誰もを頷かせる確固たる地位を築きました。はじめてこの作品を聴いたときの衝撃は今も覚えている。はい、これを聴かずして「オレUKロック好きだね」なんて言ってる大馬鹿者にはラリアットですよ。@「With No Shoes」〜A「North Country Boy」〜B「Tellin' Stories」の冒頭の流れは芸術品。優しくてそれでいて力強いメロディがうまい彼らのいい部分を抽出したような楽曲が連発される。タウンゼント的な楽器展開とローゼズに負けず劣らずな凄まじいグルーヴを見せるC「One To Another」が光る。そしてこれがシャーラタンズの中で最も好きという人も多いだろうG「How High」、自分も大好きですこれ大名曲。楽曲テンションの高さ、この低くクールなサビメロとギターの絡みに興奮しないわけがない!ある辛口評論家をして十年に一枚の傑作と言わしめたこの作品を聴くべし、聴くべし。しかしなぁ、何故かわからんけど日本の中古CD屋ってシャーラタンズやたら安いんだ・・・。


COLDPLAY「Parachutes」
クリス・マーティンというひとつの素晴らしい才能が世に現れたことを世界に高らかに知らしめる作品。いまやイギリスをはじめ、アメリカも含めた全世界で売れてしまっている大成功をおさめたトップバンドの1stであります。心に染み渡る声の素晴らしさとメロディの美しさが最大限に迫ってくる名盤である。クリスの表現力の豊かさには思わずため息が漏れます。@「Don't Panic」のイントロのサイケ感から聴き手をグッと引き込み、A「Shiver」で切なくも開放感を煽り、B「Spies」C「Sparks」ではアコギの有効性をとことん高め、そしてそのまま作品中最大のキラーチューンであるD「Yellow」に突入し、E「Trouble」ではあまりにも美しすぎるピアノと美声を披露する。本編ラストI「Everything's Not Lost」の、大合唱が予想されるであろうサビはもうお手上げ状態。息もつかせぬ至極の名曲ラッシュ。Dに関しては、メロ、歌唱力、詞、アレンジ、音・・・あらゆる全てのものが完璧なうえに、太陽とタンポポが重なっているシングルのジャケを見ただけでグッとくるという秀逸作品、ってのはホント個人的なもんだけどね。UK好きはもちろん、メロコア好きでもJ-POP好きでも、演歌好きでもいいや、とにかくこのアルバムを聴いて何も感じない人はセンスなし。断言する。
COLDPLAY「A Rush Of Blood To The Head」
大傑作。やはり傑作であった「Parachutes」でのデビューにより大きな期待を背負うこととなった彼らは、周囲の過度な期待を更に上回る作品を我々に提示してきた。同胞の感覚を疑うことにここジャポネでは低評価だが、彼らはこの作品でなんとグラミー賞を受賞し、本国イギリスのみならず世界を制したのである。その研ぎ澄まされたメロディはまさに天上の調べ。時に冷たく、時に優しく聴く者の心を揺さぶる。もちろん前作のようにピアノ、美メロ、高く伸びるボーカルなんてものは言うまでもなく健在なのだが、@「Politik」冒頭、こちらの予想を裏切るスネア連打の躍動感溢れるロック。1stからの明らかな成長を予感させる。この作品で特に注目しておきたい点は二つ、一つは前述の通りグルーヴ感溢れるバンドに変容したこと。もう一つは、バンドサウンドになったことにより、ギタリスト、ジョニーのその非凡な才能が見えやすくなっていること。メロディとグルーヴを単純で音数の少ないリフで味付けしていく作業において凄まじい実力を放つ。しかしやはりクリス・マーティンのメロディメイカーぶりには舌を巻く。C「The Scientist」を筆頭に、ピアノにのせての極上メロがいたるところで流れる。加えて、以前から思っていたことだが、彼らの一番強烈な武器はその構成力だとオレは考えている。場面が二転三転する、曲の山場を迎えてその先に更なる山場が待ってる、なんてことが大得意。どの曲がどうこう語る必要はない全曲必聴。是非聞きなさい、たった二枚で断言してしまうが、後にこのバンドはU2やオアシスのように時代を代表するバンドになっているはずだ。


THE COOPER TEMPLE CLAUSE「See This Throuth And Leave」
2001年に彗星のごとく現れ、期待の新人としてUKプレスの大絶賛を受けた6人所帯バンド。90年代に伝説化したバンド、特に音が評価されたバンドだね、そういったものの影響を色濃く受けている。例えばプライマルや、マイブラ、ジザメリあたり。しかし何が凄いかって、影響受けてます程度のレベルを飛び越えている点が凄いのであって、それらをもっと重くして勢いづけている感じ。彼らはシューゲイザーでありロックンロールでありハードロックなのだ。爆音ギター&ベースであるというのに、その上実験精神がひどく旺盛で、ところどころに作りこまれた音飾、効果音がちりばめられている。前半エレクトロ〜後半大爆発というタイプの曲が多いのも、彼らの色々やりたいんだ感が出ていて貪欲な姿勢に頭が下がる。それでいてイギリス的な斜に構えたメロディセンスはちゃんと存在しているし、6人もいるという利点を最大限まで引き伸ばして試行錯誤し且つ成功しているところが凄い。@「Did You Miss Me ?」の静かに迫りくる電子音とギターから爆発疾走した後、A「Film-Maker」での2002年最高峰リフにつながっていく部分は新人とは思えない。普通はそこで燃え尽きてしまうのにB「Panzer Attack」という作品中最大の勢いを持つ曲が控えているのだ。C「Who Needs Enemies ?」のように良メロで落ち着く場面もあるのだが、後半になってもF「Let's Kill Music」、H「Been Training Dogs」を筆頭に津波のように次から次へと曲が襲ってくる、そんな作品。彼らはひとつの歴史を作れるか !?


THE CORAL「The Coral」
全ての既存のルールからはずれた反則変則技で、一度はまると二度と抜け出せない泥沼のようなバンド。平均年齢が10代だというのに、こりゃねーだろう!!ギター、ベース、ドラム、鍵盤、打楽器、管楽器が妖しく絡まりあったおもちゃ箱の中で闇鍋を囲んでいるような楽曲群はどれもこれも奇天烈であり(G「Skeleton Key」で最高潮)、そのルーツがロックンロールとブルースとニューウェイヴとサイケデリックとジャズと・・・とか、どうこう語るのすら馬鹿らしくなる。この作品を聴いていると空も飛べる気がしてくる。A「I Remember When」やF「Waiting For The Heartaches」におけるリー・メイヴァースを酔っ払ったおっさんにしたようなボーカルや、C「Dreaming Of You」間奏後を代表とし作品中いたるところに存在する頭の悪すぎるコーラスといい、こう書いているとコミックバンドと思うかもしれないが、そんなことはない。彼らの凄いところは、その若さとは相反する圧倒的な達観姿勢で、楽曲の持ち味を個々が消化しきっている点である。各メンバーのアレンジはどれも真似や影響の域を脱したものであり、高いレベルでのオリジナリティに溢れている。しかし凄いよこの作品は。そんなワケわからん奇天烈曲ばかりなのに、これはまぁいっかみたいに飛ばす曲が全く無いこの矛盾さ具合。全曲名曲なのです。さらにC、E「Goodbye」あたりを聴けばジェームス・スケリーのメロディメイカーぶりも容易にわかるので、息の長いバンドになれる予感をひしひしと感じるのである。
THE CORAL「Magic And Medicine」
前作から一年の間を置かずに売された、UKロック界の切り札コーラルのセカンド。前作で垣間見えた良メロディが前面に押し出た楽曲群。そういった意味では期待通りなんだけど、期待通りという言葉がこれほど似合わないバンドもいないと思うのでその点ではちょっと残念。何よりも気に入らないのはジェームススケリーが歌うことに専念してしまっていて、前作で見せたおっさんいぶし銀ボーカルがなりをひそめている点であり楽曲中に見える破天荒なマジックは少なく、あのついつい笑っちゃう瞬間は明らかに後退している。んが、しかしそういったスタンスで臨んだ作品内で問われるのはバンドのバックグラウンドでありセンスであり、それは真の意味での底力。それに関してはさすが奇才集団である、ポップ心に溢れた素晴らしい曲がそろっているといっていいだろう。楽器陣は相変わらずの絶妙にズレながらも曲にうまく絡む視点でアレンジ出来ているし、ジェームスも表現力は高いのだ。ギタリスト二人が特にこのアルバムでは大きく変化していて、全編通してアルペジオの響きを大切にした時に優しく時に妖しい世界を構築している。摩訶不思議な雰囲気が漂う中でB「Liezah」、I「Pass It On」の優しく語り掛けるような良メロがまるで暗い森の中に妖精を発見したかのように映える。他に好きなのは、お得意サイケE「Milkwood Blues」、バンディッツ風のF「Bill McCai」。来日ライブで見せた超絶ジャムを想起させるようなインスト作品が国内盤のボートラに入っているので買うなら国内盤。