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GLOSS「Gloss」
オレは実はこういったフレンチポップテイスト溢れる音楽は凄く好きで、セルジュ・ゲンスブール的というか、非常にポップでキュートな感覚が凄くセンスいい。音楽の聖地アイスランド出身のボーカル、ハイドラン・アナの軽やかで甘い歌声が魅力なのであるが、元Smallerのギタリストや元The Stairsのドラマーなどのロック畑のミュージシャンで構成される楽器隊がレトロなギターリフやサウンドを基調としているため、ロック好きの人でも十分聴ける内容だ。たまにはこういうのもいいよ。ボーカルの官能美とUKテイスト溢れるギターが印象的な@「Lonely In Paris」、B「New York Boy」らへんおすすめ。表ジャケはイマイチなんだけど、中ジャケが凄くおしゃれでかっこよいのよ。それを表にすりゃ良かったのに。


GRAHAM COXON「The Sky Is Too High」
御存知、ブラーのギタリストであるグレアム・コクソンの1st。ブラーというバンドにおいて、デーモン・アルバーンという才能が光っているため、時として、このもうひとつの負けず劣らずな才能が隠れ気味になる時があります。もちろんデーモンの曲にグレアムの泣きたくなるようなギターが絡む瞬間というのは素晴らしきマジックの瞬間なわけだけど、ブラーにいては出すことのできない彼の魅力というのもあるわけで。そういった魅力が爆発しているのがこの作品だと思います。これを聞けば彼がもっと、切なくも感情的な音楽をやりたいんだなぁというのがよくわかります。後のパワーポップ感溢れる作品より、オレは暗いアート的なこの作品を一番評価しています。凄くよくできた作品だと思います、これ。@「That's All I Wanna Do」、E「I Wish」のファズギターといい、C「A Day Is Far Too Long」の物哀しい曲調といい非常に切なくなります。そしてD「R U Lonely?」やF「Hard & Slow」のにおける秀逸アコギイントロ&メロディ。そしてラストJ「Mornin' Blues」における崩れたような乾いたブルースギター。やっぱ才能あるんだなぁ、こいつ。


GWENMARS「Driving A Million」
イギリス的な音をしているが、ロサンゼルスの3人組。西海岸とは思えないそのサウンドは、時に80年代ニューウェイヴものを感じさせ、時にサイケを感じさせ、時にパワーポップを感じさせ。幅の大きさを感じさせる楽曲群は見事。しかしこのアルバムを引っ張っているのは何と言っても@「neon tom」だろう。非常に退廃的な雰囲気を持っており、ノイズギターに地を這うようなボーカルが絡み合う様は圧巻。この曲に比べてしまうと、他の曲がどうも練れてない感が浮き立ってしまう。この曲が無ければ無いで好盤だったんだろうが、存在してしまっているだけにどこか惜しさが残る。トータル的にこの路線でいってたら、もっともっとガツンときてたような気がするなぁ。ジャケださいしな。


THE HIVES「Your New Favourite Band」
まさに笑撃だった。もう、ギャグと紙一重のクール!とかじゃない。ギャグだね、これは。かのアラン・マッギー主宰のレーベル移籍後の過去二作品の総括盤がこれ。この作品によりイギリスはじめ各国で大爆発した彼ら、その180km/h 出せる剛速球ピッチャーがデッドボールぶつける、みたいな楽曲群は彼ら独特のエッセンス満載である。ボーカル、ペレのぶっ飛び具合が素晴らしく、声が裏返ろうが音程届かなかろうがバントフライになろうが本塁まで全力疾走。ギターリフも、昨今の流行のガレージ系モノと見られがちだがよくよく聴くと、HIVES流の独特なリフであることがわかるだろう。ライブではできないだろうと思われる(そして実際叩けていない)暴走ドラムもクール。また、メンバー内に超巨漢とハゲ髭がいるのも最高。PVも笑わずにはいられない。いろんなギャグ的恩恵に恵まれながら、楽曲としては笑いながら鳥肌が立っちゃうような名曲ぞろいで気が付けば終わってる。全曲素晴らしきかな必聴盤。ちなみに、オレは彼らのこのアホさぶりは確信犯だと踏んでいる。ホントは結構頭いいんじゃないかな、って。


HOPE OF THE STATES「The Lost Riots」
デビュー直前にバンドの要だったギタリストが自殺してしまうという苦境を乗り越えて送り出された作品。新人らしからぬ音と円熟の構成力を見せてくれます。メンバーにバイオリン奏者がいるというのもバンド世界に大きく貢献。内省的ながらも暗くなりすぎずに幼さの残る魅力的なボーカルが好感度大です。このボーカリストがストーリーテラーとなり、激情と絶望、そしてその先にある希望を導くHOTSの世界を案内してくれます。@「The Black Amnisias」、しょっぱながmogwai並みの轟音をぶっ放すイントロだというのが凄くセンスある。A「Enemies / Friends」のスネア頭打ちに乗せたラストのボーカルは感涙もの。バラードが強いHOTS、C「Don't Go To Pieces」、D「Black Dollar Bills」はこの年の全ての曲の中で上位を争う出来と言っていいほどのレベルの曲で、特にDの構成力と世界観には誰もがお手上げ状態でしょう。また、Type2Errorと組んだジャケットのアートワークも非常に凝った作りになっていることに加え、ライブでも映像を駆使し独自の世界を作り出しています。音楽、ライブ、アートすべてがひとつのHOTSなんだと言っているようです。新人離れしたこの作品、前半の出来が良すぎて後半の印象があまりにも薄いという弱点も持ってはいますが、間違いなく非常に良く出来た素晴らしい作品です。


HOT HOT HEAT「Make Up The Breakdown」
なんとも失笑なバンド名だが、やっている音楽も何だかひねくれている。カナダ発ホットホットヒート。くねくねと踊りたくなるようなおかしな音楽で、タムのない四つ打ちドラムにギターリフが繰り返し絡む様子は、最近流行っているダンス系ロックンロールである。しかしこのバンドの最大の武器はキーボードがギターよりも前面に出ることでよりダンス感を煽る部分である。そのため、かなりひねくれた志向の音楽であるに関わらず、非常にポップでわかりやすい仕上がりになっている。キーボードを、一切哀愁や感動を呼ぶ使い方にしないところが潔く、彼らのこだわりが見て取れる。ボーカルの実力も非常に高く、どの曲でも同質のテンションを保ったまま、堂々と曲を支配していく。何というか、すげぇはまるわけではないんだけど、でも何か口ずさんでるような類の音楽。おすすめはA「No, Not Now」、B「Get In Or Get Out」、C「Bandages」、D「Oh, Goodamnit」、E「Aveda」。Cは気づいたら「バデジェ〜バデジェ〜」って歌っちゃうよ。


IKARA COLT「Chat And Business」
イギリスはアイカラ・コルトの1st 。結成はこの作品の2年前だとかどうとか。それまで楽器なんてたいして弾いたことない、とか本人達は言っていたのを覚えているが、それにしちゃうまい。特にドラムは昨今のガレージロックのドラマーらしからぬテクニックぶりだ。スネアの音といいこのドラマーは元々ハードよりな畑にいた人なんじゃないかなぁ。さて、肝心の曲であるが、UKガレージロック、というと少し?な感じ。勿論スタイルはそういった佇まいであるし、疾走感を持ったノイジーなギターが売りなわけであるが、もっと混沌としているというか、ソニックユース的な感じ。かわいそうなことにUK版ストロークスだなんてうたい文句が付けられていたが、どこがストロークスなんだ?同時期のバンドで比べるならば、どちらかと言えばブラックレーベルとかそっち系のバンドであるように思う。しかしこのバンドの疾走感は凄い。1コードでひたすら突っ走る@「One Note」の完成度が一番高いというのも凄くおもしろい。まぁそれでもちょっと曲数が多いのもあって中盤あたりから飽きてくる感もあるんだけどね。ギター&ボーカルに女の子がいたりテクニシャンドラマーがいたりとおいしい要素を持っているバンドなので、うまく使って終盤まで一気に聞かせる作品を作って欲しいなぁ。