- 邦楽 -

ART-SCHOOL「Sonic Dead Kids」
木下理樹率いるアートスクールのインディーズ1st。アートスクールはインディー期のミニアルバム3枚が圧倒的に良いです、木下のキレっぷりや緊張感が凄くて。この作品は、バンドとしての連帯感がまだおぼつかない感じだし、何よりも音質が悪く埋もれた感じに聞こえてくるのが凄く惜しい、とはいえ楽曲はしっかりとその存在感をアピール。木下の繊細さと残酷さが浮き彫りになった歌詞と声、死という言葉を臆面もなく吐き出すそのリアルなかげりが魅力なのだがな。しかしメロディのポップセンスが非常に長けてしまっているため楽曲自身が不安さを引きずりながら前進しているような印象を受ける。それが何とも切なくてやりきれなくて、でも凄く聞かなきゃいけなくなる、そんな感じ。C「斜陽」なんて超名曲だと思うよ、メロディといい歌詞といい。ニルヴァーナやウィーザーを信仰しているのがわかる重いオルタナサウンドに乗って聞こえてくる言葉。本当にリアルなものは何なのか、上っ面な感情やかっこつけただけの言葉が蔓延してしまった日本音楽シーンにおいて、彼のような歌詞を書く人は貴重だと思うなオレは。「俺には俺だけの狂気がここにある」。そうか。
ART-SCHOOL「Mean Street」
デビュー作「Sonic Dead Kids」で日本ロックシーンにオルタナのメスを入れた木下理樹率いるアートスクールが半年という短いスパンで発表したインディーズ2nd。とりあえずボーカルはおいといて楽器の音質はだいぶマシになってる、良かった。前作への高評価から得たものはある種の自信だろうか、力強いナンバーがそろい疾走感に勢いが感じられる。これは次作、次々作へとつながる流れだ。前作以上にポップでわかりやすいメロディは確実にファンを増やしたことだろう。サウンドが重く地を行く中、ギタリストの大山純が一人「静・動」のギターを巧みに使い分けて体現している点がおもしろい。ただ、この作品の完成度はあまり高くないと思う。どうしてもWEEZER1stからの要素が多すぎる点が否めないし、歌詞がイマイチなんだよな。少し無理してる感じがするのはオレだけだろうか。でも@「ガラスの墓標」、A「ロリータ キルズ ミー」に関しては、メロに木下独特の夢と残酷が混ざり合う歌詞がうまく絡んでて素晴らしいぞ。


KING BROTHERS「6x3」
こんなこといっちゃーなんだが、日本の音楽なんて大半が理解に苦しむゴミですよ。大半がゴミなれど、こういう音を出すバンドがいるから日本の音楽も捨てたもんじゃない、って思っちゃう。この作品はかのジョンスペのプロデュースによるもの。同じギター二本&ドラム編成だし、乾いて太い豪快ギターの音にも共通項があるかもしれない。ただジョンスペほどストレートではなく、もっと斜に構えてドス黒い感じがする。ロックンロールなリフに乗せて、とにかく言葉を吐き出す叩きつけるという表現がぴったりな彼ら。ライブではお馴染み「ロックンロールは嫌いですかぁ」等の、ケイゾウの全てを挑発するような煽りトークが最高で、マーヤのマシンガンMCはクールなのかダサいのかわからんがとにかく笑える。多分ダサい。しかし熱い。最強すぎるリフと、ケイゾウの台詞がクソかっこいいA「黒くぬれ!!」、マーヤが何言ってんのかまるでわからないほどの言葉の嵐B「1979」、サイケな長尺ナンバーE「クール誕生」、最後のケイゾウの台詞は非常に格好良い。ハッとさせられるような台詞がそこにあります。彼らの音楽スタンスを集約しているようにも思える。6曲入りアルバムなれど、満足な出来映え。でも売れないんだよなぁ・・・。


くるり「図鑑」
個々の曲の出来が非常によろしいこの作品。トータル的にというよりも、個々の曲を堪能して凄さがわかる類のもの。作品を聴けばギターボーカル岸田繁が、ノイズギターやプログレ的場面展開などをいかに取り込もうとしていたかが容易にわかり、歌詞もトム・ヨーク的な自己嫌悪で暗いものが多い。「虹」のイントロから始まり、「ん?」と思わせた瞬間(虹は前作にある)に曲が収束し、前作を車でひき潰すかのようにA「マーチ」の切迫したドラムが叩き出される。このドラミングが突如テレビのスイッチを切ったかのごとく静かになる場面では、これを1曲目に持ってきたことに思わずニヤリとしてしまう。オルタナ感バリバリのギターがかっこいいB「青い空」、E「窓」、F「チアノーゼ」、歌詞と曲調が175度くらい違うG「ピアノガール」、ノイズギターと絶叫ボーカルが印象的ながら斉藤和義よろしくフォーキーなサビメロを持つJ「街」、K「ロシアのルーレット」でのプログレな曲展開は頭がイってるとしか思えない。こう書いていくと実験的で敬遠したくなる人もいるかもしれないが、岸田の純日本製な声と歌詞のためか非常に聴き易い。終盤のL「ホームラン」、N「宿はなし」でメロディメイカーぶりを見せつけて、お腹いっぱいの名曲ぞろい。また、岸田の感覚ばかりに目が行きがちだがベーシスト佐藤もかなりハイセンスであり、例えばC「ミレニアム」での、穏やかな曲調の裏でメロディとそぐわない非常に音圧の高いベース音を鳴らす発想にセンスの良さが伺える。ドラムの橋本真也も体格の割に絶妙なアレンジをするテクニシャンだ。21世紀初年度に飛び出した日本の傑作盤。
くるり「Team Rock」
前作「図鑑」で一躍日本ロックシーンの寵児となったくるりであったが、この作品から彼らは電子音を曲の中心として取り入れだしている。作品タイトルとその内容から、岸田はこのような音響系こそがロックだと宣言したようだ。シングルとして発売されたA「ワンダーフォーゲル」、H「ばらの花」を聴けばその方向転換の具合がよくわかると思う。A発売当初は賛否両論で揺れたが、落ち着いてみればなんてことはない、大成功であった。確かにオルタナとプログレを見据えた第2の「図鑑」を作ったところでそれを越えることはなかっただろうし、埋もれたしまったかもしれない。前作同様、今作も一曲目で前作でこだわったようなプログレ的展開を打ち込みで行うことにより前作からの発展を宣言しているように思える。そして序盤のシングル曲から中盤過ぎにバラードを配置しラストはフォークな曲、といった構成的な部分は前作の踏襲であるが、その内容がかなり違う。上記した通り電子音、音響系を大胆に取り入れた楽曲群、さらにおもいきりマイブラな曲あり、カントリーロードのメロを活用した曲あり、ダフトパンクな曲ありと、これをパクリととるか岸田のひねりととるかは個々の自由だが、完成度は高いので許せるのでは。歌詞がグッときて、ゲストボーカルのスーパーカー・フルカワミキが素晴らしく生きているHはくるり最高峰だろう。「安心な僕らは旅に出ようぜ」の"ぜ"の部分に感動を感じるのはオレだけだろうか。


GRAPEVINE「退屈の花」
グレイプバインの立ち位置というのは非常に微妙なところであり、メンバー全員が曲を作るバンドでその音楽性は渋く層を選びそうな曲をやったかと思えば凄くマーケット向けな曲をやったりもするので、玄人ウケをする反面、J-POP志向の素人ウケもいい。かといってそんな爆発的に売れるわけでもない。そこそこの層に支えられてそれなりに自分たちのやりたい音楽をやっているようだ。腰の入った演奏に、キーボードやバイオリンで曲を壊していくような遊び心もある。オレが洋楽をほぼまったく聴いていなかった高校初期一番好きだったバンドがこのグレイプバイン。思えばこの頃から西川のギターが最高だと思っていたので今に通ずるUK志向が自分の中にあったように思う。ミドルテンポの曲をやらせたら右に出るものはいないだろうというくらい完成度の高いガッツリしたロックンロールを奏でる彼ら、ドラムのスネアのため方やギターの泣き具合、田中の声がミドルテンポになると怖いくらいに生きてくる。このバンドの真骨頂は次作と次々作にあり、この1stフルアルバムは非常にポップで広い層を狙っている志向が聴き取れる。次作以降にソングライティングの才能が爆発するドラマー亀井の曲が少ないことも起因しているかもしれない。それでも名盤ではあり、おすすめとしてはギターソロのワウ具合が素晴らしい@「鳥」、あらゆる層にウケそうな良メロA「君を待つ間」、ボーカルとギターの絡みが感動的なC「遠くの君へ」、次作への橋渡しとなる哀愁ポップソングF「涙と身体」、田中の歌詞世界のレベルの高さがわかるI「愁眠」あたりか。この人たち選ぶコードが最高。
GRAPEVINE「Lifetime」
99年発表、グレイプバインにおいても日本ロック界においても大傑作盤であると考えて良いだろう。この年最も多く聞いた一枚であったと思われる。彼ら最大の持ち味である「ミドルテンポの泣き」がここへきて大爆発。亀井亨のメロディメイカーぶりや、田中の歌詞世界、西川の哀愁ギターが秋の寒空に広がっていく。バンドの演奏力も圧倒的に高くなっていて、特にグルーヴ感に関してはヴァーヴあたりを髣髴とさせ、ミドルテンポの連帯感に共通性を見出せる。シングルでもA面B面でセットになっていた、A「スロウ」、K「望みの彼方」に関しては歴史的名曲だと洋楽にどっぷり浸かった最近の自分でもいまだに思っている。特にKがオレは大好きで、都会的な幻想と張り詰めた空気を湛えながら、聞かせる部分は聞かせグッとさせる瞬間も併せ持つ素晴らしき構成力。「君の姿を見つけた」と謳っていたフレーズ、手元にいた「君」との距離感が主人公の虚空と共に広がり最後の最後に「君の姿を"見てた"」に変わり真なる主人公の有様を吐き出す瞬間は田中の文学センスの高さにしてやられる。しかしこの二曲が作品の顔!というわけでなく、B「SUN」、C「光について」といったキャッチーなナンバー、そして@「いけすかない」、I「白日」といったバンド感ゴリ押しのナンバーらがアルバムの要所を支えているため洋楽的なコアさを持ちながらも非常に広く日本の層にアピールする素晴らしいポップセンスを見せる。これは5年以上たった今も新鮮に聞くことが出来る、いい作品は何年経っても色あせることはないんです。
GRAPEVINE「Here」
前作と併せて聴いていただきたい彼らの傑作盤の片割れ。どこか乾いた日差しを受けているような楽曲たち。しかしそれはゴキゲンな日差しなどではなく、どこか寂しげで、暖かなんだけど痛みを感じるような日差し。非常に中身のある内容で、かなり力を入れて作りこまれたのが伺える。全体的に70年代英米ロックの影響が強いのは一聴瞭然で、これは彼らのルーツをモロに表現した結果であると思われる。前作での成功を経て、更にやりたいことがやりやすくなった環境が見える。冒頭部の@「想うということ」、B「ナポリを見て死ね」からも分かる通り、前作よりもひずみを効かせて、さらにテンポを落としてどっかり腰を据えた曲が多く、一般受けはしないかもしれないが、全体の曲の完成度は恐らくこの作品が一番高い。特にタイトル曲でありこの作品の顔であるJ「Here」の完成度が凄まじい。前作の「望みの彼方」に比肩しうる壮大感。また、イントロリフがキャッチーでセンス溢れるC「空の向こうから」、I「羽根」も強くお勧めしたい。特にIのシンプルだが翳のあるリフはギター西川に平伏したくなる。と、まぁ読んでいてオレはホントこのバンドに関してはかなり贔屓目のレビューを書いているが、本当にオレの青春を支えたひとつのバンドであり、実際いまだに聴くことのできる数少ない日本のバンドなんですな。


THE JERRY LEE PHANTOM「Surf Ride Monstar '99」
アメリカのツアーを経て、ここ最近さらに実力と人気をあげてきたJLP。高校の頃に買ったこの作品を紹介しておきましょう。キラーディスコロックンロールバンド、ジェリーリーファントムの2nd。ダンスミュージックを基調としたドラムに、王道を走るベース、小気味のいいカッティングギター、聴く者の心を躍らせる高いバンドアンサンブルだ。そしてこのバンドを語るに欠かせないのがキーボード奏者の鮎子。グイグイ引っ張るアグレッシブ且つ変則的なリフを叩き出し、女の子的なかわいらしい発想も随所に盛り込まれたポップさ溢れる躍動感。チームワークが非常に高いこの作品、ギュイギュイ楽曲が突っ走っていく様には思わず体が揺れてしまっている自分に気づくであろう。ジャジーでクラシカルなピアノが素晴らしい@「MONSTAR」、アドレナリン大噴出フロア沸騰間違いなしのA「STARMAN」の冒頭からこの作品のレベルの高さがうかがえる。踊らなきゃ損!グルーヴを重視していながらも、コードとメロで聞かせるG「Brand New Black Star」、H「Gangway」みたいなのもあるしいいね。いやぁ、高校の頃よりも、グルーヴや音のなんたるかを自分なりに理解した今聴いた方が凄さがわかるね。


SUPERCAR「スリーアウトチェンジ」
今となっては電子音を巧く駆使した音世界を構築するバンドだが、これはシューゲイザーとブリットポップの影響をモロに受けた典型的英国風ロックバンドな作品となっている、スーパーカーは1st。全部で19曲と曲数が多い、のだが非常にポップなうえに曲によってナカコー、ミキとボーカルがシフトするので、飽きずに最後まで聴くことができる。メンバー内では過去のモノとして存在してしまっているが、はっきりいって20歳そこそこの若者が作ったとは思えないほどの濃密な作品となっている。ホントにポップでオレ、これ凄い好きなんだけどなぁ。スーパーカーの魅力はまず何と言ってもナカコー、ミキの声。浮遊感を持ったサイケな声はホントにおいしい声してやがんな、と思わせる。特に今作でのミキは素晴らしく、後にスーパーカーは段々ナカコーボーカルがメインになっていくのだが、今作においてはミキの方が曲の良さを巧く引き出せているように思える。G「Lucky」は素晴らしき男女ボーカルがいる彼らならではの名曲。まだ10代の頃のデビュー曲@「cream soda」、超ポップでミキの声が素晴らしいC「Drive」、H「333」、イントロがもろオアシスのスタンドバイミーなE「u」、ノイズまみれの疾走感J「My Way」、Q「Hello」、まさにシューゲイザーな長尺ナンバーR「Trip Sky」等いい歌ばっか。早熟な音楽性を持っていながらも歌詞的には少し翳った青春が詰まったまさに青々しい名盤。しかし、オレこの前ひとりで青森行ってきたんだけど、よくあの音楽環境の中にいてこんなハイセンスな奴らでバンドやれたよなぁ。小学校とか中学校の仲間でしょ?確か。


downy「無題」
邦楽を聴いてこんなにショックを受けたのは初めてである。日本にこんなバンドがいたなんて、と愕然としたのを覚えている。メンバーにVJがおり、ライヴでは照明をいっさい使わず、メンバーは映像を囲むようにステージの四隅に散る。映像と演奏をリアルタイムで重ね合わせ、異様としか言い様の無い異次元空間を作り上げている。ということでdownyを語るにはライブを語らなければ始まらないのであるが、この音源だけでもその衝撃度は凄まじい。まず欠かせないのが、リズム隊の柔軟で奇想天外な発想力である。ダンスビートに影響を受けているのはわかるのだが、そんな生易しいものではない。どの位置にスネアやバスドラがくるのか予想もつかない展開、ハイハット等のシンバルの鋭い音色、ベース音のゴリ押し具合も恐ろしいほどの出来映えで、そしてひたすら反復、反復・・・展開、反復・・・。また、ギターは轟音と不可思議なアルペジオを中心に音響系楽器として存在している。さらに英語だと思って歌詞を見ると英語に似せたような古典的単語が文学的に並んでいて驚きである。ボーカルの青木ロビンの儚げで消えてしまいそうなボーカルも、曲のミステリアスな雰囲気に相乗効果をもたらしている。@「酩酊フリーク」、C「左の種」あたりは比較的キャッチーか。音楽ちょっとでも好きなら、ライブを是非見て欲しいと思う。君の価値観を覆してくれるはずだ。


detroit 7「Vertigo」
はじめて見た時に、やられたなこりゃと思ったのを覚えている。どこか日暮愛葉的なひねた女性ボーカルを擁するのだが彼女がいい味を出してるんだわ、左利きギターで骨太いギターをかきむしる様が。楽曲はまさに頑固なロックンロール、余計なアレンジをせずに直球勝負なドラム&ベースにこの女性ギタリストだ。歌詞も日本語だったり英語だったりするがあくまで英語的な響きを乗せよう、歌おうとしている。英語の曲の方がボーカルが生きてるんだけど、両方の言語の曲を今後も演っていきそうな気がするな。今作は、初の全国発であるミニアルバム。@「おわりははじまり」、A「Adam」、B「Ordinary Madness」の勢いが素晴らしい。ロンドンとNYのパンクを純粋に取り入れようとしているのがわかる。うーん、正直音楽性的に日本では出てきづらいバンドだったと思う。楽曲の変化に富むわけでもないので、いやらしい話これが3人男だったら出てこれたかどうか。でもそれは「女性効果だよなぁ」というつもりも全然なくて。美人ボーカルであるというのに、女の子ならではの利点を廃して硬派に演奏する部分が恐らく彼女の身上であり持ち味なわけであって、こういう音楽で出てきてがんばってるバンドは応援したくなります。まだまだ若いバンドだし、日本の音楽シーンの中でどういう位置に腰を据えるか興味が湧く次第である。


NUMBER GIRL「School Girl Distortional Addict」
御存知ナンバガのメジャー移籍後一枚目。音はとってもわろし。ナンバーガールは当時はなんだこりゃ、って感じではまれなかった。でも次作収録の「Urban Guitar Sayonara」という曲で衝撃を受けて聴きなおしてはまっていった。さて、オレがナンバガに感じる一番の魅力、それは何か?その歌詞、曲内容やディストーションギターだろうか。いや、違う。ナンバガの一番の魅力、それはメンバー全員の個性がしのぎを削りあっている部分である。向井の圧倒的存在感や歌詞、キース・ムーンばりの手数で暴走するアヒトのドラム、ひたすら重く直滑降な中尾のベース、ひさこの縦横無尽で破壊的なギター。どいつもこいつも個性の塊なのに互いに負けていない、ここが凄い。正直個人的な意見だと、ナンバガの曲自体はたいして響かない。オレはこの個性のぶつかり合いを感じるのが好きなのだ。さて、この作品であるが、アヒトとひさこがまだ向井と中尾についていけてない印象を少し受けるが、演奏力やグルーヴはこの頃から凄い。そして初期ナンバガらしいストレートさがよく表れている(といっても個性的だけど)。ひさこのギターも後に比べればだいぶ素直なアレンジであるし、初期衝動で突っ走る系の曲が多い。だからこそドラムの迫力が凄いG「透明少女」、ブレイク後の疾走部分がかっこよすぎるH「転校生」のような名曲も生まれるのだけれど。向井の歌詞に関して、意味わかんないから嫌って人もいそうだけど、オレは日本語だからこそ生み出せる音の響きや世界観を模索しているので相当好感を持っている。今作では若くも変態的な視点で描かれる青春群像がかなりかっこいい。


MO'SOME TONEBENDER「echo」
日本が誇るオルタナバンド、モーサム。個人的に大好きで、ライブでずっと成長を追っていきたいバンドです。最初の一音で世界を変えるというコンセプトを持っているバンドで、その音の獰猛さと持続し続けるテンションは、他のどのバンドの追随も許さない。すさまじいバンドアンサンブルをライブでは体感することができるが、このインディー期の作品にもそんな彼らのテンションがみなぎっております。いまだにライブの定番曲に居座る@「Dawn Rock」。藤田勇のドラムが最強にかっこよく、Aメロのタム回しは絶品。ボーカル百々の「アンタ誰だ」の一言には、混沌と激情が濃縮されている。全曲非常にこの頃のモーサムらしいオルタナティブな曲なのだが、作品のタイトルにもなっている、C「echo」はバラードである。この曲があるから今作でモーサムの底知れなさを感じることができるのだ。特に、曲が終わったと見せかけて静寂の中に百々のギターが拡散する部分は何度聞いても鳥肌モノだ。
MO'SOME TONEBENDER「Hello」
日本人らしからぬ、音に対する高い姿勢を保つモーサム・トーンベンダーのメジャー1stフルアルバムである。いまとなっては次に何をしでかすかわからない意味不明なバンドだが、この頃は指針がわかりやすかった。キャッチーさとオルタナティブさが程よく同居したモーサム入門的一枚としておこう。この頃から武井と勇のキャラが確実に確立されてきていて、バンドとしての急成長ぶりがよくわかる。見た目もキャラも派手な武井の音が重くまとまり出して、勇のアレンジとメロディセンスの幅が一気に広がっている。相変わらず凄まじいバンドアンサンブルを誇る@「冷たいコード」、B「ジョニー・ボーイの話」、I「カリフォルニア・ガール」、爆撃機が襲い掛かってくるようなドラムが圧巻のA「HigH」、メロディが切なくもキャッチーで虚無的な雰囲気が素晴らしい中盤どころの要G「キャラバン」、前作中の「echo」で見せたような美しく狂気的なJ「天井の低い部屋」、なんとも奇天烈な雰囲気満載なK「ニッケ」、最後まで飽きずに聞くことができる。基本的に爆音ギターを主体とした楽曲揃いなのだが、曲によってはサイケな方向に流れようとした曲もあり、可能性の振り幅を広げようとしている姿勢もわかる。一番好きとかそういうのを抜きにして、なんだかんだモーサムの中では一番聴いた一枚かもしれないな。
MO'SOME TONEBENDER「Light,Slide,Dummy」
モーサム史上間違いなく最も濃く激しい一枚。グランジとサイケなロックンロールを追い続けてきた彼らのターニングポイントにして最高潮のテンションで彩られたひとつの高みと取れる一枚。あまりの濃さに引いてしまうかもしれなく、全作品の中で最も彼らを体現しているに関わらず最もリスナーを遠ざける作品かもしれないな。今もライブのド定番曲、開始3曲@「凡人のロックンロール」、A「Dum Dum Party」、B「モダン・ラヴァーズ・ボレロ」のぶち切れ具合が無茶苦茶に格好いい。中盤〜後半はダウナーでありながらも狂気的。しかしそういった重苦しい雰囲気でありながらも、E「idiot」、K「One Star」のような煌くような楽曲を組み込ませてくるところが非常にニクい、というか巧い。しかし何がここまで作品を重くしているか、それは個々の楽器のレベルの格段の上昇、これだ。もともと演奏力はあるモーサムだが、この作品内の技術力は半端ではない。ライブが展開されているようなグルーヴ感、ボーカルのキレっぷり、ギターのノイズの使い方、リズム隊の音と勢い、アレンジの複雑性、これらの要素が混然一体となってリスナーに襲い掛かる。まぁこりゃあ一般ウケする類のものではないなぁ。クソかっこいいわ。