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PRIMAL SCREAM「Screamadelica」
見た瞬間この作品だということがわかるほど強烈且つ有名なジャケを持つ作品。その佇まいはまさにロックンロールスター、ボビー・ギレスピー率いるプライマルズの3rd、です。プライマルズの最高傑作との呼び声高いこの作品、91年発表というわけだが、今聴いてもこれが15年近くも昔の音とは思えない。時に軽快であり時にゆったりとしているがトータル的な解放感がどこまでも高く、トリップするという感覚を音楽で具現化するとこんな作品が出来上がるのだろう。唯一のバラード曲であり超名曲G「Loaded」の曲位置が絶妙で、それまでの流れでどっかに飛んでいっちゃった感覚を優しく包み戻してくれるような効果はボビーの狙い通りなのか。一本とられたよ。オレは基本的に生音畑の人間で打ち込み系音楽をそんなにたくさん聴かないから、あまりこういう作品を専門家然りで解説はし切れないんだけど、とにかくトータルアルバムとしての完成度が恐ろしく高く、音楽好きには是非聴いてほしい一枚であることは間違いない。
PRIMAL SCREAM「Give Out But Don't Give Up 」
前作である種の高みを表現したプライマルズなだけに、今作でどんな試みに挑戦しているのかが注目されたが、蓋を開けてみればロックンロールとソウルをストレートに表現した純粋音楽。ギターリフといいモロな60,70年代ロックンロール。音の先駆者であることを期待されていただけにこの作品の評価はイマイチ芳しくない。しかしこの作品一枚だけに注目した内容に関してはかなり素晴らしいものであり、いまやライブの大定番曲にして最も盛り上がるA「Rocks」も最高にロックンロールな名曲@「Jailbird」、F「Call On Me」もこの作品に入っている。あれこれ手を伸ばして成功するには、基本的にメロディセンスがないと駄目なんだということを思い知らされるというか、B「Cry Myself Blind」、D「Big Jet Plane」、K「Everybody Needs Somebody」のバラードのメロディと泣きギターが本当に素晴らしい。コーラスや管楽器も見事に生きていて、米南部音楽の影響を色濃く反映させている一枚。あまり評価の芳しくない作品だが、ロックンロール大好きなオレとしては、個人的にプライマルズの中で上位を争う作品である。
PRIMAL SCREAM「Vanishing Point」
前作はロックンロール作という休憩点、いや回帰点とでも言おうか。それを経て送り届けられた今作はプライマルスクリームに寄せられた期待に対して見事に応じる作品となったことだろう。70年代のとあるカー・ロードムービーのタイトルを借りて発表された5th。ガレージ、サイケ、ロックンロール、エレクトロ、デジタルビート、多くの要素を詰め込んでダブという調理法で昇華させた作品。ダブなんて相当量のセンスが問われるであろうしやろうと思っても簡単に出来ないんだろうけど、それを高次元で見せ付けるボビーのハイクオリティ思考には舌を巻く。映画の主人公の名前を拝したB「Kowalski」がやばい。様々な音が楽曲空間内を縦横無尽に飛び交う中、中心をうねり進むベースが無茶苦茶かっこよい。そう、このベースは元ストーン・ローゼズのマニによるものだ。終盤に飛び出す爽快ロックンロールG「Medication」や傑作バラードK「Jesus」が作品に華を添えている。また、映画トレイン・スポッティングにI「Trainspotting」を提供したことで話題にもなりました。おすすめ、映画の世界に引き込むコンセプトを担う@「Burning Wheel」、B、デジタルインストナンバーF「Stuka」、G、ギターがやばすぎるH「Motorhead」、K。大傑作と思われる。
PRIMAL SCREAM「XTRMNTR」
デジタルビートに乗せて爆音を撒き散らす新世代モダンロック、といってももう6,7年前の作品になるわけだけども。ケヴィン・シールズが参加したことも話題となりました。前作「Vanishing Point」で見せた音世界を更にハードにへヴィに。マニのベースも相変わらず唸っているし、純粋なロックンロールバンドとしてスタートしたこのプライマルスクリームというバンドは、一体どこに行ってしまうんだろうかという期待と不安が入り混じる。時代に応じて、いや、むしろ先取りする形で音世界の形を変えていく、まさにロック界の魔術師。しかも超攻撃的な。ライブド定番曲になっている、ライブでは疾走形態で演奏される爆発ナンバーA「Accelerator」、先行シングルのロックンテクノC「Swastika Eyes」を筆頭に、どの曲もセンス非常に高し。@「Kill All Hippies」、B「Exterminator」、J「Shoot Speed / Kill Light」あたりもやばいね。脳天にかかと落としを食らうようなこの作品を是非。


RADIOHEAD「Pablo Honey」
当時のグランジブームに乗ったような作品であり、本人達が忘れたい過去と言っているこの作品であるが、かといって駄作かと言えばまったくもってそんなことはなく、ポップで聴き易い曲がずらりと並んでいて、この作品が大好きという人がかなり多いのも事実である。とはいえ、トム・ヨークのボーカルもまだ若々しく、ジョニーのギターも今のキレっぷりから比べるといたって"普通"のギターである。次作以降と比べるとやはり未熟さを感じるこの作品、まさかこのバンドが次に「The Bens」を作ると皆予想できたであろうか。が、しかしこの作品内には恐るべきキラーチューンが一曲存在している。そう、誰もが唸る大名曲A「Creep」。自己嫌悪を語る歌詞、どこまでも伸びていくボーカル、エドのアルペジオ、サビ前に炸裂するジョニーの余りにも痛烈なギター。この曲でレディへはシーンに見事、大輪の花を咲かせたわけである。

RADIOHEAD「The Bends」
1stと聴き比べてみると、これが同じバンドなのかと聞きまごうほどの大躍進を遂げたレディオヘッド最高峰の一端である2nd。まず特筆すべきはジョニーという天才ギタリストが頭角を現したこと。突如飛び出す爆音や冷たく繊細なアルペジオには光る才気を感じさせます。さらにトム・ヨークの表現力、歌唱力は前作の比ではありません。そして個人的に注目したいところなのですが、この作品、曲の並び方が奇妙だと思っています。絶対的なアンセムであるはずの3曲、D「Borns」、F「Just」、G「My Iron Lung」が中盤に並び、前の方にはB「High And Dry」、C「Fake Plastic Trees」といったバラードが配置されているのです。そしてこれこそがこの作品を更なる高みに押し上げる仕掛けだと個人的には思っています。もちろん全曲良い曲だということもあるのですが、早々とバラードを聴かせてしまい炸裂ギターロックを逆に配置することで、個々の曲がぶつかりあい作品トータル度として落ちてしまうという勿体無い現象を見事に防いでいます。おかげさまで前半にグッと聴き手を引き込み、中盤〜後半で熱狂させ、J「Sulk」、K「Street Spirit」で覚ましつつ取り込んで終わるという何とも上手い流れ方をしています。これをレディオヘッドの最高傑作と考える人がやたら多いのも頷ける完成度、キャッチーで心の底からかっこいいと思える大傑作盤です。
RADIOHEAD「OK Computer」
問答無用、全人類必聴盤。レディオヘッドの最高峰であると共に、ロック界の最高峰レベル。表現力豊かな三本のギター、打ち込みを模した正確且つ重厚なドラム、うねり動くベースライン。時に感情的に、時に無機質に歌うトム・ヨークの声。個々人のレベルが横の広がりをどこまでも押し広げ、ロックやフォーク、ニューウェイヴはさることながら、プログレ、民族音楽、打ち込み、音響系、エレクトロニカ、数多のジャンルを包括し緻密に組み立てたサウンドアプローチが奥行きを持たせている。アートをいかにポップにまで昇華できるか、ここまで入り組んだことをしながらも同時に大衆的な成功を収めたことは驚異。いや、ホント凄い!お手上げです。導入部で口をあけてオレ達を待ち構えているモンスター楽曲A「Paranoid Android」。度肝を抜かれます。変拍子に加えて、安静から激情に飛びまくる精神分裂のようなプログレな曲展開。炸裂するジョニーのギター。しかもそれでいて聴き易いのがまた凄い。トムヨークの表現力、陰な楽曲にひたすら打ちのめされ鬱になるC「Exit Music」、Cの後に置くことで光を挿す役割を果たすD「Let Down」。この曲はファンの人気が根強い。Aと並びこの作品を歴史的名盤足らしめているバラードE「Karma Police」。イントロのピアノ&ギターから暗く広い世界が目の前をよぎる。ブレイク時の「This is what you get」とつぶやくように歌う様は、いつ聞いても鳥肌が立つ。そして終盤にさらにこんな名曲が!といつも思うメランコリックナンバーI「No Suprises」。全曲名曲。こんな暗く陰鬱な作品であるというのに売れに売れたのは必然だといわんばかりの圧倒的な説得力を持った作品。


RAZORLIGHT「Razorlight !!」
デビューアルバムが思ったより良くなく、音も質もアレンジもこちらの日本編纂ミニアルバムの方が正直良いのでこっちをば。ソリッドなギターに、言葉をメロディラインからうまくはずしたり乗せたりしながら徐々にテンションを上げていく部分がこのバンドの特徴だね。後半盛り上げ系は好きだから良し。ちょこちょこ動き回るドラムがオレは気に入らないが、ギター、ベースは自分の仕事範囲をわきまえた堅実なプレイ。ということでこのバンドの核は何と言ってもボーカルのジョニーであり、彼の声とメロディは甘くエモーショナルで、そこらへんの凡人には出せないものを持ってはいる。@「Rock'n'Roll Lies」が一番いいかなー。イントロのギターと、後半盛り上がるとこが素晴らしい。でも世間的な評価は高すぎると思う。そんな手放しで絶賛するようなバンドではないよ、オレ的には。バンドの実力は低いし、曲だって同郷のリバティーンズなんかと比べてしまえばたいしたことないし。


ROONEY「Rooney」
アメリカ産の良質バンドが多い昨今、ロサンゼルスはROONEY。新人なんだけど、良くも悪くも「よく出来てますね」って印象、というか。土台のしっかりとした演奏に相当音作りのうまいギタリストがいるバンド。イギリス的なサウンドやルックスをしているわけだが、曲自体がけっこうアメリカ的な爽やかさを包括している点は好き嫌いが分かれそう。若さゆえのキラキラ感が全編通して込められていて、そのへん個人的になんだかなぁと思ったりもするけど。おすすめは、ギターポップの深みの可能性を感じる代表曲@「Blueside」。メロが爽やかなのに、ボーカルが爽やかに出過ぎず内面から捻り出すように唄うところがイレギュラーなのかもしれないが凄くうまい。それと、サビ前からサビへの流れにやたらはまってしまったF「Daisy Duke」。オレはサビとギターソロを重ねられるとそれだけでアウトなんだわ。素敵。しかしこのジャケはとんでもないね。オレは買うのをためらったほどだよ、ジャケで。