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THE VERVE「Urban Hymns」
ギャラガー兄弟の強烈な後押しもあって再結成を果たした後に発表された、全英チャート14週連続1位という金字塔を打ち立てたイギリスが誇る大傑作。97年は怒涛の年で、今現在傑作と認定されている作品がたくさん出ているんだよね。これ然り、オアシスのBeHere然り、レディへのOK然り、シャーラタンズのTellin'〜然り、スピリチュアライズドの宇宙遊泳然り・・・。さて、そんなこんなでこの作品であるが、UKチャートはゆるいから嫌いと言う人にも自信を持っておすすめできる一枚。@「Bittersweet Symphony」を筆頭に、ストリングスを導入した曲をうまく配置することで圧倒的スケールを作品中に漲らせていて、しかもその各曲の完成度の高さは驚嘆に値する。リチャード・アッシュクロフトの甘く絡むボーカルとその美しすぎるメロディが心地よいA「Sonnet」、C「The Drugs Don't Work」、I「One Day」。とてつもないグルーヴを発揮するバンドとしての力はB「The Rolling People」、L「Come On」で高みを極めている。これがバンド内で軋轢を生んでいる者たちが出せる音なのか?と疑ってしまうほどの呼吸感。グレイト。しかし、バンドはこの作品後に元々崩れていた関係を修復することができず結局解散にもつれこんでしまった。うーん残念。


THE VINES「Highly Evolved」
本国オーストラリアでは全くの無名ながら、シングル@「Highly Evolved」がイギリスで大絶賛を浴び鮮烈なデビューを果たしたヴァインズの1stアルバム。Nirvana meets The Beatles というありえないフレーズで非常に注目を浴びました。丁度その頃E「Get Free」のPVをテレビで見た直後で、お?あのバンドじゃん!ホントかよ!?と思って速攻視聴したのを覚えています。で、その内容はどうかと言うと、そこまで絶賛される作品ではないんじゃないかなぁというのが実際のところ。確かに太くハードなギターリフにぶっ飛んだボーカルはカート・コバーン的かもしれなく、オルタナサウンドの中に垣間見える意外なまでの繊細なメロディはジョン・レノン的かもしれない。でもそれはあくまで、〜的、な話であって、カートの神がかった雰囲気やジョンの至極のメロディに比べればちょっと高評価すぎるだろう、という感じ。しかし、あくまで比べる対象が高いだけの話で、そこらへんのバンドなんかよりは画線を逸しているのも確か。特に、ハードなアンセムは非常に心強く、@、E、G「Factory」あたりは彼らの実力を測ることができる。ただ、meets The Beatles と言われているグッドメロディの方がたいして目立たないので、次作でそっちを強調してくれることを期待、なわけだ。
THE VINES「Winning Days」
これは路線としては大成功だよ、ヴァインズ!!圧倒的に前作より良い出来です。クレイグはメロディセンスがあるのだから、このようにメロディを聞かせる流れをアルバムの中に作ったほうが絶対いいものができるんです。確かに「Get Free」級のドキャッチー爆発モノはないものの、オレは@「Ride」、A「Animal Machine」、B「TV Pro」の頭三曲オルタナの流れでそれは十分カバーできてると思う。作品を決定的に名盤足らしめているのはC「Autumn Shede U」、E「Winnng Days」、G「Rainfall」といったバラードナンバー。前作でバラードに力を入れればいいのに、と思っていた部分を見事に消化したということです。演奏力も格段にアップしているし、十分成長したんだなぁ、というよりは表現したかったことをやっと表現できたのかな、といった感じだ。これでいいんだと思う。決してニルヴァーナになる必要はないし、ビートルズみたいな曲を作る必要はない。〜的、なものから離れることにより、評価なり期待なりは下がるのかもしれないけど、やっぱり「ヴァインズ」としての作品を作った方が作品としては素晴らしいモノができるんだ。しかしあまりにも奇行が目立ち、ツアーに出る度に病んでいるとしかいえない行動をとっていたクレイグ君は、最近アスペルガー症候群と診断されました。今後の活動を期待します。


WEEZER「Weezer」
まず問答無用なジャケのだささ、これ。持って歩きたくないほどださい。しかし内容は素晴らしいメロディの数々、ウィーザーの1st。ボーカリストがカリスマ性のないへタレキャラというのも新鮮で、そんな弱々しい彼が精一杯に放つ楽曲たちは不思議と多くの人間たちを魅了していったそうな。グランジ期アメリカの真っ只中で、ピクシーズを敬愛しているせいもありやはり轟音ギターを趣としているが、とにかくメロディがポップであらゆる層にアピールするものであるため、独自の華々しい世界を形成することに成功している。@「My Name Is Jonas」、C「Buddy Holly」、F「Say It Ain't So」等若さ全快のグッドメロディで突っ走っているが、この曲のハイライトはラスト曲I「Only In Dreams」だろう。作品の終わりを象徴するような切ないアルペジオと激しいファズギターを繰り返し、穏やかに幕切れすると思いきや、終盤に近づくにつれギター二本が徐々に絡まりリズムが加速しだす。昇るだけ昇って溜まった力を吐き出されるギターソロは感涙もの。USロックファンにもUKロックファンにも聴いてもらいたい一枚。


THE WHITE STRIPES「White Blood Cells」
なんともまぁおもしろいバンドが出てきたなぁ、というのが第一印象。白赤に統一されたポップ感、音楽はブルージーでエモーショナル、編成はギターとドラムだけ、しかも姉弟。世界中見渡してもこんなバンドはストライプスだけでしょう。しかもジャック・ホワイトの愛用しているアクリルのギターはそこらへんのおもちゃばりの安物らしく、そこんとこ実にクール。でもこいつらはセンスで音を作ってしまっている点が凄い。ジャックはそんなギターを使っているにも関わらずスライドギターは天才的だし、恐ろしいほどにゴリ押しノイズを響かせたり心湧き踊るカッティングを連発する。まぁ、うまいんだよなジャックは。メグははっきり言って下手なのに、音に関してはオレは手放しで褒めたい。スネアとバスドラの生々しい音は凄くかっこいい。フィルインもほとんどなく、単純なアレンジを反復していくドラムにジャックの変幻自在なギターが絡む。オレは@「Dead Leaves And The Dirty Ground」が一番好きかなー。人気あるのは多分C「Fell In Love With A Girl」だろね。勿論これもいいね。で、音源のみだと捨て曲がいくつかあるのも否めないが、彼らの本質はその捨て曲達をライブでうま〜く使ってくるところなので、そういった意味で捨て曲ではない、存在価値があるね。


YEAH YEAH YEAHS「Fever To Tell」
NYという街はヴェルヴェッツ以降ホントにアーティスティックな感覚を持ったバンドが多数生まれているというか、アメリカ産のバンドでもNY出身のバンドは特に、ひとくせもふたくせもあるイギリス受けしそうなおもしろいバンドが多い気がする。不思議な街だよね。そういった意味ではかなり究極値を叩き出しそうなYYYsの、渾身のデビューアルバム。幼女〜老女、そして怪女まで多様な顔を見せるカレン・Oのボーカルの存在感は歌唱的にもビジュアル的にも圧倒的。サウンド面においては、ベースレスを微塵も感じさせないドラマーとギタリストのセンスの良さが光る。同じベースレスでも、ホワイトストライプスやブラックキーズのようなバンドは、ベースレスによる隙間を敢えて隠さずうまく使って曲の完成度を上げるバンドだけど、YYYsの場合は隙間自体を発生させない。レギュラー、マッチドグリップと使い分け、太鼓類のヘッドからリムからスタンドからどこでも叩いてしまうテクニシャンドラマーと、空間&轟音使いギタリストの感性には感嘆すべきである。個人的に好きなのは前半部、@「Rich」、A「Date With The Night」、B「Man」、C「Tick」。特にBの曲の入りのかっこよさは脱帽モノ。


THE ZUTONS「Who Killed The Zutons ?」
これは凄い!04年台風の目だ。最近のリヴァプール特有のごった煮系で、この手のでは最高峰と思われるコーラルと比べても遜色のない実力。曲作りのセンスにかけては上だろう。この嘘っぽさとマジっぽさが同居した不可思議なサウンドにオレはもう病みつき。長いロックンロール史の土臭いおいしいとこどりをその天性のセンスでアレンジしきってしまっているうえに、聞いたことも無いようなリフやリズムが飛び出すこともあるので只者ではない。各楽器隊の実力は申し分なしなのだが、固定メンバーとしてサックスがいるのがとても良いな。また、こういったいろんなとこに手を伸ばす(こいつらの場合やりすぎだが)バンドは、メロディがしっかりしていないと中途半端になってしまうのだが、J「Dirty Dancehall」なんかを聴けば彼らのメロディセンスの才が伝わるものと思う。なんといってもまず、出だしの@「Zuton Fever」のリフで失笑であり、そのリフと同じメロディラインに鳥肌である。作品の顔であるA「Pressur Point」は、初感覚な意味不明コーラスをのせた前半のサイケ部から後半の爆発に持っていくところが凄すぎる。裏から煽る弦楽器と高揚感抜群なサックスが素晴らしいD「Hanvana Gang Brawl」、子供だましなホラーに出てきそうな(褒めてます)G「Nightmare」、K「Moons And Horror Shows」も最高だし、B「You Will You Won't」とか演奏している側の方が楽しそうだよなぁ。楽曲は演奏側も凄く楽しめそうなものばかりなのだ。そこがでかいんだきっと。