悪席そして大雨11日

まさかインドでこんな大雨にあうとは思ってもいなかった。ガタガタに揺れるバスの中から土砂降りの雨を受けながら歩く人々を見つめていた。

思い立ってすぐにネパールのポカラ行きのチケットを手配した。バラナシからだと丸二日、一日かけて国境線スノウリまで行きそこで一泊、また一日かけポカラに行く形になる。時間こそ多少かかるが、値段は圧倒的に安いし見えてくる風景も違うだろう。翌朝バスに乗り、インドの悪路を国境線スノウリに向かうのであった。悪路、というよりもむしろ座席がひどいのだ。なにせオレの座席は壊れてはずれているのだから。悪路に乗り上げると座席ごと身体が揺れる。ひどいクジを引いてしまったようだ。

↑のどかな風景と老人。

ひたすらに長い国境線までの道、町を通過するごとに渋滞だ。夕刻、雨が・・土砂降りの雨が。インドと雨、あまり共通性がないような印象を持っていたけど・・・そりゃ降ることもあるよな。ずぶぬれになりながら歩く人、自転車を走らせる人を見ながら、バラナシでも今大雨なのだろうか、と思いを馳せた。12時間以上かけて、国境線スノウリに到着。停電中なのかもともと電気が通ってないのかとにかく真っ暗で、イミグレーションオフィスもろうそくの灯りで出国審査だ。

そして、ネパールに入国だ。ついにやってきた、ネパールだ。

↑最強に汚く、そして凄まじく寒いこの宿で一泊。



山国なんだな12日

インドは平坦な道だったが、ネパールに入った瞬間に山道になる。朝陽を浴びて呼吸をする山々の中を、ローカルな民営バスに乗りポカラへ向かう。当たり前のことにいまさら気づいた、あぁここは山国なんだな。日本の風景に近いものを感じる。人々の顔立ちも日本人と同じモンゴロイド系統なので、どこかこの国には懐かしさを覚えるんだ。

↑この中をバスはひた走る。

人々は皆一様におだやかで優しく、そしてシャイで、はにかみ顔が似合う。どうしても横柄で図々しく信用ならないインド人とのギャップを覚えてしまう。自然も美しく、途中休憩でつまむこの土地の食事も非常に旨い。この国での旅は素敵なものになるだろうという確信が高まってゆくな。



山越え谷越え

文字通り山を越え谷を越え、バスはポカラを目指す。この山風景は圧巻だな・・・棚田が広がり、川が流れ、そして途中一瞬だけ顔をのぞかせたヒマラヤ山脈がテンションを上げる。ヒマラヤを拝むには、時期と時間を選ばなければならない。冬季からギリギリ今の3月くらいまでは適している時期、更に雲に隠れる前の午前中がベストだ。そして実は、オレがネパールに入る前日まで、まったくヒマラヤ山脈は見えない状態だったらしい。タイミングは大事だな。

夕刻、やーっとポカラに到着。長かったー。バスを降りた瞬間凄い勢いで客引きが押し寄せてくる。ここポカラは完全にホテルの供給超過。運と交渉次第で、綺麗で広くて快適な素晴らしい部屋に、嘘!?って値段で泊まれたりしてしまう。それでも客をとるのに必死なのだ。バスで一緒だった妻子持ちトムさん(日本人ね)と、いくつかホテルを周り、ひとつのホテルに決める。トムさんとは、ここポカラで数々の経験を共に過ごすこととなる。

この宿で働いている、ラムさんラジさんコンビと強烈に意気投合。年もあまり変わらないし感覚が近いのかもしれない。旅は出会いだな。

ラムさんは日本が世界に誇る名曲「上を向いて歩こう」が大好きで、普通に歌うことができる。そのメロディ、歌詞を改めて自分の中で繰り返してみて、オレは何だか切なく温かい気持ちになった。現在政治的な問題が強いネパールだけど、この国の人たちは上を向いて歩いているのかな。

↑泊まっていたホテルです。実はこれでも150円程度。



チベットの人たち

ポカラを歩いていて「う〜ん、完全に観光地ですね」という結論に落ち着く。少し裏に入ったりするとネパールがあるのだけれど、メインロードは欧米のどっかの通りなんじゃないか、という感じ。まぁそれはしょうがないね。

夕飯を食べていると、5,6人位の集団がいて声をかけてきた。彼らは、ポカラからバスで30分位のところにあるチベット難民キャンプに住む兄弟たち、そしてそこにホームステイをしている一人の日本人の女の子。一緒に夕飯を食べていると、「もし良かったら明日遊びに来ないか?」と誘われる。「え、うん!是非行きたいんだけど!」とオレは即答した。

絶対に行きたかった。というのも、チベットはオレの憧れの土地であり、いつか行ってみたい場所ナンバーワンだからだ。チベット仏教に惹かれるし、政治的な問題や思想的な部分にもかなり興味を持っているんだ。ゆえに、この誘いはありがたかった。なにより、気さくで優しい彼らともう一度会いたいなと単純に思った。明日が楽しみだな。