夜明け17日
朝陽が段々と真っ白なヒマラヤ山脈を照らしてゆく。サランコットの頂上から眺めるそれは、神秘的でありまた壮大であり、見るものを捉えて離さない力を湛えていた。 早朝5時前、昨日のバカドライバーを引き連れて、ひたすらに暗い道を走る。ヒマラヤを拝みに行くのだ。ホテルの屋上から遠くのヒマラヤを見るのではなく、軽トレッキングとして有名なサランコット山の頂上まで一気に車で上り、迫り来るヒマラヤを見たい。運のいいことに空気は澄んでいて、綺麗な山と朝陽が見られそうだ。夜明け前だというのに街には多くの人が行き交う。「大学生は早朝からのコースと午後からのコースに分かれてるんだよ」。だから若者がこんなに多いのか。しかし、こんな早朝から勉強することも凄いが、なんといっても先生が大変だよな。運動している人や仕事に向かう人、ネパールの朝は早い。オレたちの車は一気にサランコットを頂上まで登る。 ↑そして夜が明ける・・・。 輝く山 山が輝いていた、って表現が妥当だと思う。朝陽により空が明けるとともに、ヒマラヤ山脈がその姿を現す。宿の屋上からだと、今オレが立っているこのサランコット山が邪魔をして、間から見える、という感じだったが今回はそのサランコットにいる。遮るものは何もない。朝陽を浴びるマチャプチャレは光を目いっぱいに受けて輝いていた。標高7〜8000mという世界最高峰を誇示するかの如くそれはそれは美しく壮大な様相で、オレは温かい紅茶を飲みながら、言葉も無くただそれを見つめるのみだった。 ↑大感動のヒマラヤ。 ポカポカ日和・・・18日 昨日の午後と、そして今日はポカポカと気持ちが良いのでボーっと過ごしている。気づけばもう3月も中旬が過ぎようとしているじゃないか。インドからトレッキングまで結構駆け足だったからな。ボーっとしよう。 と、しかし昨日の晩にラジさんと食べたダルバートがぶち当たりついにゲイリーさんとゲイローさんという二匹の悪魔が襲いかかってきた。インドで全く腹を壊さなかった超人的なオレだが、ついにきたか奴らが。ダルバートというよりは、多分水道水を普通に飲んだのが悪いのだと思うが。トムさんがインドの薬を持っていたので一つもらうと、それがまた信用できなさそうな薬なんだ。カプセルの色が半分緑で半分青、センスを疑ってしまう。病人をびびらせてどうする。しかしこれがインドではイケてる色の組み合わせなのかもしれないと思い直し飲んでみると、あまりの薬の強さに速攻で眠くなりベッドに倒れこむ。なんて危険な薬なんだ。しかし目が覚めてみると全快復、なんとすばらしい薬なんだ。 最後にやっちまった19日 朝起きると・・・貴重品袋が無い!パスポートも金も航空券も入っている大事な腹巻だ!部屋中ひっくり返しても出てこない、枕の下にあったはずなのに・・・。外に出てみると窓の下に転がっていた。血の気が引いたよ実際。戦慄を覚えながら見てみると、パスポートと航空券は中に残っていたが現金一万円札が抜き取られていた。被害は万札一枚か・・・良かった。でもドアには内側から鍵がかかっていたし窓には格子が入っているので、どうやって取ったのかがわからない。唯一考え得るのは、俺が寝返りをうち枕がずれたところを釣竿か何か棒状のもので取られた、ってことか?ありえるのか、そんなこと。 盗難届けを出してもらうために警察署に向かおうとすると、ラムさん達的にはやっぱり届け出てほしくないわけで。ネパールの警察機構は私欲のために動くことも多いらしく後々面倒なことになるらしいのだ。何より宿の信用問題に関わる。正直オレも警察で色々な手続きをするのも面倒だったし、結局ラムさんがオレに「相当分のドルを払うよ」ってことで示談。でもよくよく考えてみて、このとんでもない経済格差がある中でオレに何十ドルも払う決断をしてくれたことに対してオレは何だか切なくなって泣けてきたよ。 とまぁ朝はドタバタしてしまったのだが、今日は一週間以上も滞在していたポカラを出る日なんだ。 いざカトマンズ 本当に楽しかった。また是非来たいと心の底から思う。みんなと別れの挨拶を交わし、ポカラ空港に向かう。本当はバスで行きたかったのだが、カトマンズに通じる道の橋がマオイストに爆破されてしまったため、急遽飛行機で向かうことにしたのだ。少し痛い出費だったが、時間の節約にはなる。なにせ20分で着いてしまうのだ。 2時間ほど遅れたものの無事飛行機は飛んでくれた。機内は20人ほどしか乗ることの出来ない狭さであり、窓側の席がいいなと密かに思っていたのだが、なんてことはない全ての席が窓に面していた。一体どれだけの棚田と段々畑を擁しているのだろうこの国は。上から見るとその多さがよくわかる。 ↑機内から。 首都の喧騒 カトマンズはネパールの首都であり、喧騒と排気ガスの凄まじい街だと聞いていたが、デリーやカイロのカオスに比べると可愛いものである。むしろ、活気があるのに街はそれなりに綺麗であり、道のところどころにある仏塔が敬虔さを高めている。人は言わずもがなで優しいし、まったくもって問題はないよ。 ↑歩けば色々な発見がある。 久しぶりに一人で歩いているな。バックパッカーが集まるタメル地区の宿を値切って200ルピー。300円くらい。設備もなかなかで気に入ったので決定である。散歩がてら夕飯に塩辛いチョーメンを食べ、地元の若者と絡んだりしつつ宿に戻ろうとするが、なかなか戻れない。散々道に迷い、何度も人に道を聞きながらやっとのことで帰り着く。街中が大停電だったのだ。「この停電は何時に戻るの?」「わからないな・・・多分夜9時には戻ると思うけど、まぁなんとかなるよ」。停電なんて頻繁に起こるものなのだろう。ろうそくの灯りで過ごす夜もたまにはいいじゃないか。ポカラでも何度か停電はあったが、とうとうカトマンズ初日のこの日電気が復旧することはなく、真っ暗であるにも関わらず聞こえてくる街の喧騒を子守唄に目を閉じることにした。 |