これがインドの列車事情8日

今日は昼過ぎにバラナシ行きの列車に乗るのだ。到着は明日の朝ということで15時間にも及ぶ列車の旅。この凄まじい喧騒ともオサラバなわけで、最低だと思っているデリーなのに感慨深くなってしまうから旅って不思議だよな。

駅、まったくわからない。一体どの列車に乗ればいいのか。プラットホームが10以上ある大船駅状態であるというのに、表記がヒンズー語。しかも乗るべき列車の表示が、唯一英語表記の電光掲示板のどこにも出ていない。おかしいぞ。人に聞いても、その人により言うことはバラバラで、もう何が何だかわからない。やっとのことで乗る列車を発見!しかし・・・

ポーッ  ガタンゴトン

えぇー!ドア開かずに発車しちゃったんですけど!わけもわからずに駅員や人に聞きまくり、とりあえず列車が遅延になったことだけはわかった。しかも22:40発・・・7時間待ち・・・。ホームには足の踏み場もないほどの人間で溢れている。人身事故起きた時の辻堂駅のようでありえない。オレは体育座りをし「インド最低」とつぶやきながらひたすらその時を待った。

夜、時間になっても列車は来ない。一向に来る気配無し。駅員はみんな違うプラットホームの番号言うしもう誰を信じればいいのか。探し回りながらそうこうしてるうちに日付も変わってるし。もうオレの知らない間に出発しちゃったのかなー、とあきらめモードに入りかけた時に、そんなオレを見かねたのか同じ年くらいの若者が一緒に行動して親切に色々調べてくれる。こういう奴もいるんだな。そして夜中2時に差し掛かる頃、やーーっと来たよ!もう泣きそうになったね、4006の車体番号が買いてあるのを見た時には。ハー、これがインドの列車事情か。。。

↑10時間以上待たされたわ・・・。



着けば厳戒態勢9日

朝です。寝台列車だろうが何だろうが環境変われどもグッスリ眠れるオレ。うむ、何も盗まれてないな。警戒心だけは怠ってはならんね。

到着!・・・何だこの軍隊の多さは。超厳戒態勢ですけど。後で聞いた話によると、どうやら前日に駅で爆破テロがあり、数十人だかの人が命を落とすほどの大惨事だったらしい。列車はテロにより遅れていたわけだ・・・。一日早くバラナシ入りしてたらピンポイントで喰らってたかもしれないと考えるとゾッとする・・・身が引き締まる話だな。外国を旅すると、日本で平和ボケしている自分たちの無防備さを思い知らされる。危険な状態下に放り出されて初めて、決して遠い世界の話ではないのかもしれないと実感して、緊張感が高まるんだ。でもそういう感覚は大切なのじゃないかと思う。日本も何かの条件が少し変わるだけで同じような状況になるのかもしれないのだから。

なんというか、バラナシ、雰囲気が非常に貧しい。ホントにこの国はITの先端を行く国なのだろうか。むしろ一番後ろのグループを走っていそうなイメージしか沸いてこない。そんなことを考えながら、ガンジス河沿いで宿探し。歩き方の一番上に載ってるホテルの客引きがいたんで、まぁいいかとついて行ってみる。ガンジス河沿いのガート(沐浴場)付近はまるで迷路のように入り組んでいて且つ非常に暗い。サンダル履いたまま牛糞の上にぬそりっ!と足を下ろしてしまうこともしばしばだ。虫も多いしそんなに良いホテルではなかったんだけど、値段も妥当だし疲れていたし決めてしまうことにする。寝よう寝よう。

↑これ普通の道ですから。



死と生って何だ10日

凄いもんを見た。なんたる雰囲気、これが聖なる河ガンジスだ。

日の出前、ボートに乗りガンジス河をゆっくりと進む。何だろう、これは。今までなったことのない感覚、言葉が出ない。ひたすらに祈り続け河で沐浴をする人々を見ているとグッとくるものがある。人ってのはこうまで信じる行為に没頭することができるのだろうか。段々と空が明るんできて、その光は彼らを照らす。切ない。オレに当たる光ではない、これは彼らのものだ。

火葬場では人を焼いている。焼かれることを待つ布にくるまれた死体たち。しかし彼らはまだ幸せな方だ。なぜならば聖なる河に身を沈めることができるのだから。火葬場には自らの死を待つだけの人々もいる。彼らは身寄りも金もない、ただ死を待ちガンジスに流されるのを望む人々だという。

やがて・・・同じ人間の形をしていたものが灰になって河に流されてゆく。その横では歯磨きをし、身体を洗う人々、洗濯をする低身分アウトカーストの人々。ただ、毛布にくるまり手を差し出すだけの人々。生きることと死ぬことはこんなにも近いものなのか。こんなにも同列に扱われるものだったのか。しかし、これは想像や机上の話ではなく、目の前に在る事実。オレは、彼らよりも圧倒的に金も持っているし、身分制度に悩まされることもない。でもオレは彼らの前ではあまりにも無力だ。オレは何ができるんだろうか。何がしたいんだろうか。

↑早朝洗濯をし続ける彼らはアウトカースト。



先へ行く

午後、ホテルの屋上でチャイを飲み、バラナシの街を見下ろしながら考える。この街にはしばらくいるつもりだったけど、もういいんじゃないかな。今回はこれでいい気がする。何日もいることにより今朝の風景のインパクトが自分の中で薄れていくのが耐えられない。それほど強烈な思いを見たからだ。そしてその一方で無宗教のオレとしてやはりここは観光地だなと思う自分もいたわけで。自分の今までとはかけ離れた光景を見つつも反面、金目当てのインド人や外国人観光客は一際多く、オルタナティヴなものが見えにくかったように思える。それでもやはりまた来たいと思った。この聖地が持つ雰囲気は特別なのだと思った。でも今回は今離れるべきだとも思った。

ネパールへ行こう。