野生の国なんだな7日

やはりスリランカは物価が安い。前述した通りバスなんて破格の値段だし、メシも100円あれば満足いく位食べられる。ホテルも500円も出せば結構な部屋で寝床が確保できる。故にかなりこの旅も安く上がりそうだ。

今日俺はシギリヤに行こうと思っている。しかしこの場所、ジャングルの奥地にあるため、ポロンナルワからだとバスが出ていない。一度近郊の街に立ち寄ってから、そこから引き返してくる形で直通バスに乗らなければならない。正直時間と手間が勿体無い。ポロンナルワ発となると、今日中に行けるか疑問な状態。で、ちょっと贅沢して車チャーターして直接行くことにしようと思う。

宿の親父と交渉して決定。今日中にシギリヤ、そのまま南下してダンブッラに行ってしまうことにする。

ジャングルの中を走る。ところどころ陥没している限界間近のアスファルトと、赤茶けた大地の道を砂埃をあげながら走る。そして、ジャングルの木々が生い茂った中から普通に象の群れが現れたりする。なんてことだ、ありえないその非日常に眩む。いや、この地にとってはこれが日常なんだ。

「象が出てくるのはけっこうラッキーな方だぞ!」

ってあなた。ラッキーとか以前に日本でこんなこと起こったら大事件ですから。猿の群れは飽きてしまうくらいにいるし、ハリネズミなんてものにも出会えた。本当におもしろいな、スリランカは。



でか!!

ド迫力!シギリヤである。ジャングルの中で天に向かい垂直にそびえ立つ切り立った岩山。それだけでも見ごたえがあるというのに、この岩山の頂上に王宮が建っていたというのだから狂気的である。

万里の長城でも思ったが、高い不便なところに城を建てるという発想はいいとして、それを作った者たちの苦労が偲ばれる。何人も何人も命を落としながらの建設だっただろうし、よほどの権力と統率力がなければ成しえない荒業だろう。

↑切り立った崖、登るのが怖い。

5世紀後半、この地を統治していた王の息子カーシャパは、父親を監禁し弟を追放する。そして財産の要求をし続けたあげくの果てにその実の父親を殺してしまったという。肉親を殺した罪の意識からか、弟の報復を恐れたためか、はたまたその両方か、彼はこの岩山の頂上に大王宮を作ることとなる……という史実が残っているのだが、やはり憎しみや欲望は何も生まないな。彼は毎晩風の音を聴きながら闇に脅えていたのだろうと思う。それは、王位をとったものの決して「幸せ」と呼ぶことは出来ない。

↑頂上には王宮跡が残っている。



最高芸術だ

この岩山の中腹あたりに、シギリヤレディと呼ばれるフレスコ画がわずかながら残っている。鮮やかな天然の絵の具を使って描かれたこの女性たち、一体何をモデルにして描かれたのかいまだに謎に包まれているらしいが、とにかく美しい。スリランカ芸術の最高峰と名高い。

一説によると王を守る妖精とも言われているが、皮肉なことにカーシャパは、自分が最も恐れていた弟に殺されてしまうんだな。狂気が狂気を呼んだ肉親同士の殺し合いがここにはあったんだ。

↑500人描かれていたレディも今は18人のみ。