更に高く10日・11日

 次の目的は、更に高い位置にある高原都市へ行くこと。しかし移動しようしようと思いつつダラダラしてしまい、結局列車の時間を逃す。スリランカは基本的にバスでの移動が多いのだが、 オレは今回に限り列車で移動したかったのだ。キャンディを気に入っていたというのもある、朝起きるのがだるかったというのもある、雨が降っていたというのもある。とにかく次の日に持ち越して翌朝の列車に乗ることにしたのだった。

駅前に着くと、早速物乞いの方たちが寄ってくる。その中で特に印象的だったのは、一家で物乞いをしていた人らである。別にそれ自体は特に珍しいものではないのだが、時折寄って来て手を差し出してくる女の子が非常にかわいらしいのだ。基本的にあげるつもりはないので、「ごめんね」と言うと、そんなことは当たり前かのように屈託の無い笑顔を浮かべて手を振ってくるのだ。この一家の3兄弟が本当にかわいかった。じゃれあっている姿を眺めていると、その状況とのギャップになんとも切ない気持ちになってくる。物乞いというのはつらいなぁ……。

この先にはヌワラ・エリヤという紅茶プランテーションで有名な街があるが、そこを抜けてハプタレーという山間の町に行こうと思う。標高はどんどん高くなっていく。赤道のすぐそばにあるスリランカであるが、こんなに寒いとは!半袖なんて寒くて厳しいくらいだ。



三等列車

三等列車の中は非常に混んでいるのだが、人々との触れ合いもその分多い。長時間乗っていると乗客もどんどん入れ替わっていく。基本陽気なスリランカ人、おもしろい出会いがたくさんあるのだ。おしゃれで綺麗な貴婦人、写真が大好きな若者の集団、お菓子をどんどん分けてくれる同じ年くらいの若者、狭くてオレのひざの上や足の間に入り込んでくる子供たち、得体の知れない笛吹きのオッサン……。特にこの笛吹きのオッサンがおもしろすぎた。

「カメラでオレを撮れ!そしてオレに送れ!」

と、送るの大前提で乗客大混雑の車内で大仰なポーズをとる。周りの客も若干迷惑そうだ。

「〜、ってとこに送ってくれ」
「え?わからないよ。つづりがわからないから、これに書いてよ」
紙とペンを渡すと、

「いや、オレは字が書けない。」

と言う。普通に会話できて、しかも英語も話せるのに字が書けない。衝撃だ。識字率100%の日本で暮らしているとまず直面しない問題だった。彼の言う住所をなんとか聞き取り、「これでいいのか」って見せると、

「いや、オレは字が読めない。」

……。

スマン、多分手紙が貴方のもとに届くことは無い。

そのオッサンは俺のために二曲ほど笛を吹いてくれた。車内は盛り上がり、俺がポケットの中にあった小銭を1円くらい「ハイ」ってあげると、「これだけかよー!」みたいなことをオッサンが言って、車内は笑いに包まれたのであった。

↑彼らは確かタメで、とてもファッショナブルらしい……。



ハプタレー到着

そんなこんなで風景が有名な高原列車であるにロクに景色を見ることもなく、高原都市ハプタレーに到着。空気が澄んでいてとても旨い。山間にある緑に包まれた町だ。静かで何にもないところだなぁ。宿を探していた俺は思わず息を飲んだ。素晴らしい景色!