区都ウルムチ14日

ウイグル自治区の区都であるウルムチは、世界で最も内陸に位置する街であり、夏は30度以上になったかと思えば冬の気温は−30度にもなるという非常に自然環境の厳しい土地である。と、こう書くと発展に乏しい貧しい地域を想像するかもしれないが、ことウルムチに関していえばかなりの大都会といって差し支えない。イスラム教の自治区、という先入観からは遠いが、何車線にもなる道路が走り、高層ビルが林立する中国西部最大の都市なのだ。人々もどこか垢抜けていて、どこか都会ならではの雰囲気がある。僕の泊まったホテルの裏にもテレビ局があり、身なりの良い人間が多数出入りをしていた。

かといってショッピングやエンターテイメントに秀でた土地かというと特にそういうわけでもない。インフラや街の機能は完全に整っていて住民にとっては暮らしやすい街なのかもしれないが、いち旅行者である僕にとっては何の変哲もないただの街であり、一言でいえば「つまらない」のである。

↑中心部ではないがこの栄えぶり



時差

とはいえど、この空の青さは気持ちいいものだ。天気がとても良いので、街の中心にある人民公園に赴いてみようと思う。湖のほとり、さわやかな風が睡眠欲をそそる。気がつけばベンチに寝転がり、僕の意識は舟を漕いでいた。でもこれでいいのだ。ベンチでうたたねなんてここしばらくした記憶がない。財布とパスポートさえしっかり抱えていれば、こんなに気持ちのいい時間を逃す理由はないのだ。

起きてみるとだいぶ遅い時間・・・のはずが何故か明るい。それもそのはず、僕の時計は北京時間にセットしてあるからだ。同一の国とはいっても東西の広がりが大きい国である。北京とウイグルでは当然幅広い時差が生じているはずなのだが、バスや飛行機などの公共時間が北京時間で統一されているため、時計の針が示す数字と実際の日夜にギャップがあるのだ。空はまだ明るいというのに、実のところ今は夜の8時半だ。あまりにも妙な感覚・・・この土地ならではだぜ。

↑人々の憩いの場



超絶美味ラグメン

本当に夜が訪れると、僕は屋台を目指して解放南路を目指す。どうやらこの都会にもウイグル人が闊歩するエリアが存在するらしいが、この街並みを見ているととても想像ができない。しかし、南に向かうにつれ徐々に多くなる西方系の顔立ち、ベールをかぶる女性、あたりに響くウイグル語の怒号、肉の焼ける匂い、果物屋の露店。歩みをひとつひとつ進めるたびに世界が切り替わってゆく。求めていたものはこれだ。

「げ!めちゃくちゃうまいんですけど!」
思わず日本語で食堂のお姉さんに言ってしまう。キョトンとする彼女に向けて再度「ハオチー(うまいっす)」、言い直しである。ようやく彼女もニッコリしてくれる。僕がこの地域を訪れるにあたって非常に楽しみにしていた料理がある。ラグメンという。讃岐うどん並みのコシとのどごしを持つ手打ち麺に、トマトベースで炒めた羊肉や季節の野菜をかけて食べる料理。ちなみに替え玉もできる。想像のはるか上をいくこのウイグルを代表するひと皿、この旅の間何回食べたことか。

↑最高の料理ラグメン


僕は基本的にどの国のどんな料理も抵抗なく食べられるタイプであり、食に関してかなり貪欲なところがあると自分でも思う。そんな自分が今まで旅してきた各国料理の中でラグメンは一番気に入った料理と言い切って良いだろう。そしてラグメンに限らず、この地域における料理はどれも非常にレベルが高かったといえる。

スイカや、この地方を代表する果物でありメロンといって差支えない「ハミ瓜」、「サモサ」と呼ばれる肉詰めパンなどをほおばりながら歩く。10円程度でメロンを食べられるなんて・・・しかも銀座で売っている高級メロンよりもはっきりいって美味いのである。

もう日付は変わっているというのに(北京時間ではあるが)、まだまだ町は眠らない。

↑羊肉の串焼きカオヤンロウ。一気に作る。