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街歩き
こんな場所を歩いてしまっていいのだろうか、ある種の場違い感すら沸いてくる。粘土の煉瓦で積まれた壁に漆喰で塗られた独自の窓枠デザイン。まるでパテシエに愛情をたっぷり込めて作られたケーキのようにひとつひとつの建物には個性がある。迷路のような道を練り歩く人懐こい男たち、嬌声をあげる子供たち、もうとにかく歩いているだけで気持ちいいよな。 旅をしているとき、決して街歩きは常に楽しいもの、というわけではない。時には疲労感が勝ることもあるし、退屈な街だって勿論ある。嫌な思いをすることも少なくはない。しかし時に、何があっても楽しく、興奮に充ちた街歩きができる時がある。この街はまさにそういった場所であり、旅人にとって魅力的な街であることを確信した。 ![]() ↑魅力的なデザイン。そして街は全体的に綺麗です。 ![]() ↑旧市街の路地裏は迷路のよう。 TP探し この国を旅していて凄かったのは、ただの一度も「マネー」と乞われることがなかったこと。人々が全然観光客スレしていないんだよな。やはりここイエメンはまだ観光整備が整っていない国なんだな。それは上記したように観光客からしてみたらうれしい側面もあるのだけれど、別の側面から見ると面倒なこともある。まず、イエメンはビザが必要なので日本の大使館でとっていかなければならない。それくらいならまだいい。面倒なのは、旅行者は様々な町を往来するために、ツーリストポリスで訪問予定のある街を書き出した予定表を提出し、パーミッション、つまり警察の許可証を取得しなければならないのだ。まぁそれも最近はかなりラフになってきていて、結局検問に引っかかってもパーミッションを提示しなくてすむ、ということもあったりするらしいが、 とにかくツーリストポリスには行っておいた方が良さそうだ。 ![]() ↑そうとう歩かされたよ、ツーリストポリス。 事前に得た情報でツーリストポリスに行くと、カートを口いっぱいに含んだ男が出てきて、「こっちに来ちゃったのか。運が悪いね。実は二週間前に移転したばっかりなんだよ」と言うではないか。その場所がまた中心地から遠く離れた辺鄙な場所で、ツーリストポリスのクセにツーリストにまったくもって優しくない場所。何でこんなに時間かけて行かなきゃならんのよ。 寝ていた係員を起こし、無事取得できたパーミッションをコピー屋で大量コピーしたら夕飯を食べよう。シシカバブと馬鹿でかいホブズを無理矢理腹に入れて、散歩して帰る。腹が破裂しそうだ。 茜空を眺めながら、流れるアザーンに身をまかせて歩く。アザーンとは、一日五回、街中に大音量で流れる礼拝への呼びかけの詠唱のことだ。オレはアラビア国家を訪れるのは二度目で、最初に訪れたのは、自由旅行一回目のエジプトだった。全てに慣れていなかった当時、この聴き慣れないおどろおどろしいアザーンは不安を煽る歌でしかなかった。 でも、今は違う。 だいぶ心地よい。 ![]() ↑ホブズでかすぎ。 |