オフリド行き17日

ユース併設のレストランでチーズオムレツをかきこみ、バスターミナルへ急ぐ。宿からは5分の距離にターミナルがあるため便利である。今日はこの一見無機質な旧ユーゴの街を出て、一路オフリドの町へ向かう。思ったより乗り心地の良いバスに揺られ、山をいくつも抜けていく。隣に座っていたお爺さんは、日の差し込む角度が変わるたびに、僕に直射日光が当たらないようにカーテンを調節しては微笑みかけてくれる。こういうちょっとした心遣いが本当に嬉しい。

4,5時間も揺られたころに、バスはオフリドの町に到着した。海のない内陸国のマケドニアではあるが、350平方キロメートルにも及ぶ巨大な湖がここマケドニアと隣国アルバニアの国境を分かつ。その湖の湖畔都市としてマケドニア国民に愛されている地がここオフリドである。

ターミナルに着くと、早速プライベートルームの勧誘の声がかかる。宿には事欠かないオフリドだが、その中でもプライベートルームのコスパが非常高いと僕は踏んでいた。プライベートルームというのは、一般民家の一部を旅行者に貸し出している非公式ホテルのことだ。そのうちの一軒に行ってみると、スコピエのユースよりもはるかに広く綺麗な部屋で、ネットもキッチンも使い放題でしかも1泊5ユーロという破格の条件だった。決めない理由はどこにも無かった。

↑快適だ


美的景観と熱い酒

おそらく日本人を100人くらいつかまえて、「オフリドを知っているか?」と質問してわかる人は3人にも満たないだろう。それくらい日本では馴染みのない街であるが、実は世界遺産にも指定されているこの町の景観は素晴らしいものがある。青い空と湖によく映える赤橙色の屋根と石造りの町、東方正教教会群に包まれたその景観はマケドニアの人々の心をとらえて離さない。

↑夕焼けがまた町にひどく映える


街並みを眺めながら湖に沿って歩いていると、ボート遊覧を生業としているだろう男たちに「飲んでけ!」と声をかけられる。時刻も夕方、もう店仕舞いを考えているのだろう、ボート仲間ですでに酒盛りが始まっている。僕も彼らの中に混ぜてもらい、ともに自家製のシードル、林檎の発酵酒のことだが、を振舞ってもらう。言葉はあまり通じないが、そんなもの彼らには特に重要ごとではないらしく、彼らの会話の合間合間にどうでもいい質問を挟んでくる感じが心地いい。気も使われず、そこにありのままいる者として受け入れてくれる状態は、出来そうでなかなか出来るものではないからだ。

↑ひときわノリの良い爺さん


気持ちよくなった僕はそのままボートを出してもらう。酒を飲みながら、爺さんがかけるマケドニアポップスの中でもひときわファンキーなやつで、オフリド湖面のボートはダンスフロアだ。そこでテンションを上げているのは見慣れない東洋人と体格の良い老人、対岸の現地の人たちも船の進度にあわせて手を振って応えてくれる。最高に気持ち良いじゃないか。

↑一日が終わっていく……